日本応用数理学会 2017年研究部会連合発表会

日本応用数理学会 2017年研究部会連合発表会

 


プログラム

 

3月6日 (月) 会場D

セッション1(9:40 – 11:00) 座長:多田野 寛人(筑波大学)

  • 招待講演(9:40 – 10:00)
    Fast computation of the largest singular values and vectors of large-scale discrete ill-posed problems
    ○Lothar Reichel(Department of Mathematical Sciences, Kent State University, USA)

    Abstract: The singular value decomposition is commonly used to solve linear discrete ill-posed problems of small to moderate size. This decomposition not only can be applied to determine an approximate solution, but also provides insight into properties of the problem. However, large-scale problems generally are not solved with the aid of the singular value decomposition, because its computation is considered too expensive. We show that a truncated singular value decomposition, made up of a few of the largest singular values and associated right and left singular vectors, of the matrix of a large-scale linear discrete ill-posed problems can be computed quite inexpensively by an implicitly restarted Golub–Kahan bidiagonalization method.
  • 講演1(10:00 – 10:20)
    Thick-Restart Golub-Kahan-Lanczos法における片側の特異ベクトルのみを用いたリスタートについて
    ○石田 遊也(京都大学大学院情報学研究科),木村 欣司(京都大学大学院情報学研究科),中村 佳正(京都大学大学院情報学研究科)

    概要:部分特異対を求めるThick-Restart Golub-Kahan-Lanczos法では,従来法として左右の特異ベクトルを用いてリスタートを行う方法が提案されている.我々は,高精度計算の実現のため,片側のみの特異ベクトルを用いてリスタートを行う方法を提案する.加えて,本講演では,アルゴリズム内部で生成される小行列を解くルーチンとしてQR法と直交QD法を選択した場合の実装と性能評価を報告する.
  • 講演2(10:20 – 10:40)
    片側ヤコビSVDの並列計算機向け実装と性能解析
    ○工藤 周平(電気通信大学) 山本 有作(電気通信大学)

    概要:片側ブロックヤコビ法は特異値分解手法の一つであり、内包する並列性とブロック単位の操作のため、並列計算環境では高速に動作するが、収束性や並列性に大きな影響を与えるブロック選択順序については未解明な点が多い。最近、我々は並列動的順序と、可変ブロックサイズを採用したアルゴリズムを実装し、収束性の理論的解析と、並列計算機上での性能解析を行った。本発表ではこれらの結果と、実装時の工夫について述べる。
  • 講演3(10:40 – 11:00)
    一般内積に対する修正グラム・シュミット直交化の効率的実装法の誤差解析
    ○山本 有作(電気通信大学), 今倉 暁(筑波大学)

    概要:対称正定値行列Aにより定められる一般内積に対し,n本のベクトルを直交化することを考える。修正グラム・シュミット法を使う場合,従来はAとベクトルの積が2n回必要とされてきたが,最近,今倉により,行列ベクトル積がn回で済むMGS-HA法が提案された。本発表では,この手法に対する丸め誤差解析の結果を紹介する。MGS-HA法は,残差についても直交性についても,従来法と同等の精度を持つことが示される。

 

セッション2(11:10 – 12:30) 座長:山本 有作(電気通信大学)

  • 講演4(11:10 – 11:30)
    逆固有値問題に対する反復解法の収束性解析
    ○相島 健助(東京大学)

    概要:逆固有値問題とは,指定した固有値と構造を有する行列を生成する問題である.近年,応用上の重要性も認知されその数値解法は盛んに研究されている最近,講演者はある典型的な逆固有値問題に対し,行列方程式に基づく反復解法を提案した.本講演ではこの提案手法について述べ,局所的な収束性解析を行うことで二次収束を理論保証する定理を与える.
  • 講演5(11:30 – 11:50)
    Xeon Phiにおける並列2分法による固有値計算の性能評価
    ○大澤 真之(京都大学大学院情報学研究科),木村 欣司(京都大学大学院情報学研究科),中村 佳正(京都大学大学院情報学研究科)

    概要:2分法による実対称3重対角行列向け固有値計算に関して, Intel社により開発・販売されているメニーコアプロセッサXeon Phi上での実装とその性能評価について述べる. 本研究では, LAPACKの2分法ルーチンDSTEBZに対してOpenMPによるスレッド並列化を施し, その並列2分法コードからXeon Phi向けの実装コードを開発した. 2個のマルチコアCPUを搭載した計算機環境とXeon Phi上での数値実験結果を比較し, 開発したXeon Phi向けの実装コードが良好な並列性能を示すことを確認した.
  • 講演6(11:50 – 12:10)
    実対称固有値問題に対する多分割の分割統治法の高速化に関する考察
    ○江塚 温彦(埼玉大学),桑島 豊(埼玉大学),重原 孝臣(埼玉大学)

    概要:実対称固有値問題に対する多分割の分割統治法は,現在提案されている実装では,十分な精度を得るために固有ベクトルの再直交化を必要とする.近接固有値を持つ入力行列に対しては,再直交化に多くの時間を要する場合があり,全体の計算時間の中で多くの比重を占めるという問題がある.本発表では,この問題を解決すべく提案した固有ベクトルの新たな計算方法と従来の計算方法と比較を行う.
  • 講演7(12:10 – 12:30)
    実対称定値一般固有値問題の解法に用いるレゾルベントの多項式型フィルタの設計法
    ○村上 弘(首都大学東京)

    概要:実対称定値一般固有値問題の固有対で、固有値が指定区間にあるものを近似して解く。そのために、必要な固有ベクトルは良く通過させるが不要なものを強く除去する伝達特性を持つ作用素をうまく構成してフィルタに用いる。ランダムなベクトルの組を濾過して得たベクトルの組から、必要な固有ベクトルで張られた不変部分空間を近似する空間の基底を適切に構成し、それからレイリー・リッツ法を用いて近似対を取り出す。フィルタを固有値問題のレゾルベントの多項式としてうまく構成する方法について検討する。

 

セッション3(13:50 – 14:50) 座長:速水 謙(国立情報学研究所)

本セッションは 13:50 からの開始となります.他のセッションより20分遅れての開始となりますのでご注意ください.

  • 講演8(13:50 – 14:10)
    Generalizations of the shift splitting method for saddle point problems
    ○Shu-Xin Miao(College of Mathematics and Statistics, Northwest Normal University, China)

    Abstract: In this talk, three kinds of generalized shift splitting iteration methods for solving the singular and/or nonsingular saddle point problems are given. The convergence properties for nonsingular saddle point problems and/or the semi-convergence properties for singular ones of the proposed methods are carefully discussed under suitable restrictions. Numerical results verify the effectiveness of the proposed method.
  • 講演9(14:10 – 14:30)
    CGS系統の反復法に対するスムージング技術の新しい実装法
    ○米山 涼介(東京理科大学大学院理学研究科),相原 研輔(東京理科大学),石渡 恵美子(東京理科大学)

    概要:非対称な連立一次方程式に対して,自乗共役勾配(CGS)法などの残差ノルムは振動する.スムージング技術は,残差ノルムの振る舞いを滑らかにする 手法として知られているが,実装法を工夫することによって,丸め誤差の蓄積を抑えることにも有用となる.本発表では,そのような数値的安定性の向上を目的とした,スムージングの新しい実装法を提案する.数値実験を通して,得られる近似解の精度を改善できることを示す.
  • 講演10(14:30 – 14:50)
    データにノイズを含んだ悪条件問題に対するLSQR法の反復停止条件について
    ○小澤 伸也(福井大学)、畠中 康宏(福井大学)、細田 陽介(福井大学)、相原 研輔(東京理科大学)

    概要:LSQR法は反復が進むにつれて残差は単調に減少する。また、反復過程で生成される二重対角行列の条件数は単調に増加し、これら単体では反復の停止条件として用いることはできない。本研究では、これらを組み合わせて、データにノイズを含んだ悪条件問題に対してのLSQR法の反復停止条件を提案する。本方法では二重対角行列の条件数を1ノルムで評価することにより、計算量の増加は最小限に抑えられ、数値実験を用いてその有効性を検証する。

 

セッション4(15:00 – 16:20) 座長:相原 研輔(東京理科大学)

  • 講演11(15:00 – 15:20)
    行列主p乗根のためのNewton法の高速化について
    ○立岡 文理(名古屋大学),曽我部 知広(名古屋大学),宮武 勇登(名古屋大学),張 紹良(名古屋大学)

    概要:行列主p乗根の計算手法の一つにNewton法が挙げられる.Newton法の演算量は1反復あたりの演算量と所要反復回数との積であるため,それぞれの観点からの高速化が考えられる.本発表では,(1) Increment型反復式に対する1反復あたりの演算量の削減,(2) 反復回数削減のための初期値の改良の試みについて述べる.
  • 講演12(15:20 – 15:40)
    行列補完に対する部分空間法の拡張について
    ○小林 勇也 (東京大学), 相島 健助 (東京大学), 松尾 宇泰 (東京大学)

    概要:Ngo-Saad(2012)は、行列補完に対して特異値分解に基づく部分空間法とそれに関係する勾配法を提案した。本発表では、Ngo and Saadの視座が部分空間トラッキングや確率的勾配法などの類似アルゴリズムに拡張可能であることを示し、それによって得られたアルゴリズムの有用性を議論する。
  • 講演13(15:40 – 16:00)
    最小二乗問題に対するRandomized Extended Kaczmarz法の拡張について
    ○森尻 祐史(東京大学),相島 健助(東京大学),松尾 宇泰(東京大学)

    概要:連立一次方程式に対するRandomized Kaczmarz(RK)法は,期待値の意味で解に収束する乱択反復解法である.本発表では,RK法に関する以下の2つの近年の研究に着目する.1つ目は最小二乗問題を解くために考案されたRandomized Extended Kaczmarz(REK)法であり,2つ目は,連立一次方程式に対する種々の乱択解法を統一的に扱うフレームワークである.本発表では,上のフレームワークのRK法に特化した性質に着目することで,最小二乗問題を解くREK法を拡張した結果を報告する.
  • 講演14(16:00 – 16:20)
    スペクトラルクラスタリングにおける特徴量スケーリング
    ○松田 萌望(筑波大学)、保國 惠一(筑波大学)、櫻井 鉄也(筑波大学)

    概要:多量の情報を含むデータに対してクラスタリングを行う際、特定の現象に着目したクラスタリングを行うことが求められる。そこでデータ特徴量に対するスケーリングを行うことにより、事前知識を反映したクラスタを生成する手法を提案する。スペクトラルクラスタリングにおいて事前知識を反映するために、データの適切なスケーリング因子を固有ベクトルとして持つような短形固有値問題に帰着させる。遺伝子発現データを用いた数値例を示す。

 

セッション5(16:30 – 17:50) 座長:相島 健助(東京大学)

  • 講演15(16:30 – 16:50)
    Verified numerical computation for the geometric mean of two matrices
    ○宮島 信也(岩手大学)

    Abstract: An algorithm for computing an interval matrix containing the geometric mean of two Hermitian positive definite (HPD) matrices is proposed. This algorithm is based on the matrix equation in which the geometric mean is the unique HPD solution. Numerical results show the effectiveness and efficiency of the algorithm.
  • 講演16(16:50 – 17:10)
    Verified computation for solutions of inverse symmetric eigenvalue problems
    ○宮島 信也(岩手大学)

    Abstract: An algorithm for computing an interval vector containing the solution of the inverse symmetric eigenvalue problem is proposed. Uniqueness of the contained solution can moreover be verified by this algorithm. Numerical results show the properties of the algorithm.
  • 講演17(17:10 – 17:30)
    正則化項を加えた制約付き非線形半非負値行列因子分解手法
    ○荒井 亮祐(筑波大学),今倉 暁(筑波大学),櫻井 鉄也(筑波大学)

    概要:画像認識や音源分離などの分野におけるデータ解析手法として非負値行列因子分解(NMF)がある.また,NMFの拡張として分解後の行列に非線形関数を作用した非線形半非負値行列因子分解(Nonlinear semi-NMF)があり,近年提案されたNMF型ニューラルネットワークで用いられている.本発表ではNonlinear semi-NMF手法を拡張し,正則化項を加えた制約付きNonlinear semi-NMF手法を提案する.
  • 講演18(17:30 – 17:50)
    非線形非負行列因子分解に基づくディープニューラルネットワーク計算法
    ○今倉 暁(筑波大学)、井上 雄登(筑波大学)、櫻井 鉄也(筑波大学、JST/CREST)、二村 保徳(筑波大学)

    概要:近年、画像認識や音声解析においてディープニューラルネットワークが成果を上げている。その重み計算には確率的勾配降下法に基づくバックプロパゲーション(BP)法が標準的な手法として用いられている。本研究ではBP法に代わる重み計算法として、非線形非負行列因子分解に基づくディープニューラルネットワーク計算法を提案し、その性能評価を行う。