日本応用数理学会 2018年度年会 3部会連携OS

日本応用数理学会 2018年度年会 3部会連携OS

 

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会では,日本応用数理学会2018年度年会におきましてオーガナイズドセッションを開催致します.本OSは「科学技術計算と数値解析」研究部会,「計算の品質」研究部会と当部会の3部会連携により開催されます.


プログラム

9月4日 (火) 会場:D

 

セッション1:行列・固有値問題の解法とその応用(1) (09:00 – 10:20) 座長:相島 健助 (法政大学)

  • 講演1(09:00 – 09:20)
    複素モーメント型教師あり次元削減法
    ○今倉 暁 (筑波大学), 松田 萌望 (筑波大学), 叶 秀彩 (筑波大学), 櫻井 鉄也 (筑波大学)

    本講演では,高次元特徴量を持つデータのクラスタリングやクラシフィケーショ ン手法として,行列のトレースの最大化・最小化に基づく次元削減法のアイディ アを基盤とした新しい複素モーメント型の教師あり次元削減法を提案する.提案法は,分類性能の改善を目的とし,行列のトレースと二乗誤差を組み合わせ た新しい目的関数を導入し,複数固有ベクトルを含む複素モーメント型部分空間 上の最小化問題として定式化される.
  • 講演2(09:20 – 09:40)
    相互作用型の残差スムージングによる積型BiCG法の収束性改善
    ○相原 研輔 (東京都市大学)

    最近,反復法の残差ノルムの収束振る舞いを改善するスムージングについて,新しい計算スキームが提案された.これは,行列ベクトル積から発生する丸め誤差の蓄積を抑えるように,スムージング前後の反復列を相互作用させるものであり,CGS法の収束性を大幅に改善できることが示されている.本発表では,同様の手法をBiCGSTAB法など他の積型解法に適用した新しいアルゴリズムを提案する.数値実験により提案した方法の有効性を示す.
  • 講演3(09:40 – 10:00)
    Block BiCGSTAB法の近似解高精度化と数値的安定化
    ○多田野 寛人 (筑波大学), 倉本 亮世 (筑波大学)

    Block BiCGSTAB法は複数本の右辺ベクトルをもつ連立一次方程式の数値解法の一つであり,反復回数,計算時間の観点で効率的な解法である. しかしながら,右辺ベクトル数が多い場合は,残差の偽収束による近似解精度低下,及び数値的不安定性の増大により残差が収束しないことがある. 本講演では,同法の残差の偽収束を抑える漸化式の構築方法,及びその数値的安定性向上法について述べる.
  • 講演4(10:00 – 10:20)
    一般化非定値固有値問題へのシルベスター慣性則
    ○中務 佑治 (国立情報学研究所), Noferini Vanni (University of Essex)

    シルベスターの慣性則は通常対称固有値問題に対して定義され,合同変換が(正,負,0)固有値の数を保つことである.実数区間内の固有値数を計算する等に応用できる.一般化固有値問題に対しても,一つの行列が正定値であれば同じ結果が適用できる.本研究では正定値でない一般化固有値問題に対しても近い結果が成り立つことを示す.具体的には,合同変換は(正,負,0)の固有値数を保存しないが,これらが変化する度合いには非自明な上限下限が存在することを示す.

セッション2:行列・固有値問題の解法とその応用(2) (10:30 – 12:10) 座長:中務 佑治 (国立情報学研究所)

  • 講演5(10:30 – 10:50)
    非線形固有値問題に対するblock Arnoldi法
    ○長坂 英明 (慶應義塾大学理工学研究科基礎理工学専攻), 野寺 隆 (慶應義塾大学理工学部数理科学科)

    本発表は非線形固有値問題の近似解法について考える,このような問題は,流体力学などで登場し,通常,この近似解法として反復法であるArnoldi法を発展させた無限Arnoldi法が用いられることが多い.その理由は解法の安定性が比較的高いことである.本発表では,このような問題に対して,block無限Arnoldi法と非対称無限Lanczos法を提案する.具体的な問題の数値実験を通して従来手法と比較検討し,提案手法の有効性を示す.
  • 講演6(10:50 – 11:10)
    少数のレゾルベントの線形結合の多項式をフィルタとして用いた一般固有値問題の解法
    村上 弘 (首都大学東京)

    フィルタを用いて対称定値一般固有値問題の固有対で固有値が指定区間にあるものを解く. フィルタには少数のレゾルベントの線形結合の多項式をうまく調整して用いる. 多項式にはチェビシェフ多項式を用いてフィルタの設計と構成を簡易なものにする. レゾルベントの作用を与える連立1次方程式を解くのに直接法を用いる場合には, 演算量の大部分を行列分解が占めるので,用いるレゾルベントの数が少ないと演算量の面からは有利になる.
  • 講演7(11:10 – 11:30)
    対称固有値問題を解く反復射影法に対して収束を保証するリスタートについて
    ○相島 健助 (法政大学)

    一般的に,大規模対称固有値問題の数値解法には射影法が用いられる.射影のための低次元部分空間の生成においては,反復的に部分空間を更新して目的の固有空間を特定するのが標準的な手法になる.本発表では,リスタートを導入した反復射影法に対する収束性について議論する.特に,線形方程式の近似解により部分空間を生成する反復射影法に焦点を当て,リスタートに調和Ritzベクトルを用いる場合の収束を理論保証する定理を与える.
  • 講演8(11:30 – 11:50)
    実対称疎行列に対する効率的三重対角化アルゴリズム
    ○廣田 悠輔 (東京電機大学)

    実対称疎行列の固有値および対応する固有ベクトル(固有対)を求めるにはLanczos法などの反復アルゴリズムを用いるのが普通である.しかしながら,このような反復アルゴリズムは非常に多数の固有対を求めるのには適していない.本研究では,Bischofらによる帯行列reductionアルゴリズム(2000)に変更を加えることで,ある種の疎構造をもつ疎行列に対して効率的な三重対角化が可能であることを示す.また,一般の実対称疎行列に対する効率的な三重対角化に向けた展望について述べる.
  • 講演9(11:50 – 12:10)
    荻田・相島の固有ベクトル反復改良法における重複固有値の扱いについて
    白間 久瑠美 (電気通信大学), 工藤 周平 (電気通信大学), ○山本 有作 (電気通信大学)

    荻田・相島により最近提案された実対称行列の固有ベクトル反復改良法は、近似固有値・固有ベクトルの精度を向上させるための効率的な手法である。同手法のうち、単純固有値に対するアルゴリズムは導出が明快であるが、重複固有値に対するアルゴリズムは、直感的な理解が困難である。本発表では、重複固有値に対する同手法のアルゴリズムを、より理解しやすい形で導出することを試みる。