日本応用数理学会 2019年研究部会連合発表会

日本応用数理学会 2019年研究部会連合発表会


講演募集


講演申し込みは締め切りました。

暫定プログラム
3月4日 (月) 会場:A (3A203)

セッション1:行列・固有値問題の解法とその応用(1) (9:40 – 11:00) 座長:TBA
分子モータの集団的運動を解析する3次元超疎視化分子動力学コードでの準陰解法の効用について
○鷲尾 巧 (UT-Heart研究所/東京大学), 久田 俊明 (UT-Heart研究所/東京大学)

我々はミオシン-アクチン間の架橋運動が引き起こすサルコメアの収縮および伸長運動を解析するための超疎視化3次元分子動力学コードを開発した. 超疎視化の利点は粘性係数の増加および剛性係数の緩和の相乗効果により従来の分子動力学コードに比べ大きな時間ステップ(1fs→50ps)が適用でき, 1ステップあたりの計算量も削減できるところにある. しかしながらこれでも心臓の1拍動にあたる1秒の計算に1週間以上を要している. ここでは, 時間ステップを制約している強い剛性を伴う相互作用のみを選択し, LU分解の負荷を小さくした準陰解法を適用することによりさらなる高速化を図る試みについて報告する.

◎一般化エルミート固有値問題の部分固有値計算における周回積分に基づく精度保証法の改良
今倉 暁 (筑波大学), ○保國 惠一 (筑波大学), 高安 亮紀 (筑波大学)

一般化エルミート固有値問題における指定領域内全ての固有値(部分固有値)を精度保証することを考える。これまで提案してきた周回積分に基づく部分固有値の精度保証法を改良し、各積分点に関する線形方程式の数値解を精度保証する手間を省く手法を提案する。数値実験により、提案法が計算効率に関して従来法に匹敵し、特に疎行列に対して有効であることを示す。

非線形固有値問題へのBlock Arnoldi法の適用とその収束性について
○長坂 英明 (慶應義塾大学理工学研究科基礎理工学専攻), 野寺 隆 (慶應義塾大学理工学部)

本発表では非線形固有値問題の近似解法について考える.このような問題は流体力学などで現れることが多い.問題の近似解法には,近年,解法の安定性が比較的高い反復法が用いられ,Arnoldi法を発展させたInfinite Arnoldi法が有効な解法である.そこで,我々はこの手法をブロック化した,Block infinite Arnoldi法を提案し,数値実験を通して従来法と比較検討を行い,提案手法の有効性を示す.

◎リーマン多様体上の最適化におけるレトラクションの理論と応用
○佐藤 寛之 (京都大学), 相原 研輔 (東京都市大学)

本発表では,リーマン多様体上の最適化において,任意の多様体上で与えられたレトラクションをもとに,同相な多様体上の新たなレトラクションを構成するための理論を示す.また,具体的に,シュティーフェル多様体上のレトラクションから一般化シュティーフェル多様体上のレトラクションを構成し,その効率的な実装についても議論する.さらに,一般化シュティーフェル多様体上の最適化の応用として,正準相関分析に関連する数値例を紹介する.

セッション2:行列・固有値問題の解法とその応用(2) (11:10 – 12:30) 座長:TBA
◎逆一般化固有値問題に対する二次収束解法とその収束理論
○相島 健助 (法政大学)

逆固有値問題とは,指定した固有値とある種の構造を有する行列を構成することを目的とする逆問題である.古典的には,Sturm-Liouville 問題の逆問題の定式化としてよく利用されていたが,近年,諸問題への応用が検討されその数値解法は重要視されている.本発表では,逆一般化固有値問題において特に重複固有値を指定する場合に焦点を当て,新たな二次収束解法を与え,その数値例と収束理論を報告する.

フィルタの反復による固有値問題の近似対の改良
○村上 弘 (首都大学東京)

実対称定値一般固有値問題の固有対で指定区間に固有値があるものをフィルタを用いて解く.フィルタはレゾルベントを用いて構成する.レゾルベントの作用を実現する連立1次方程式は直接法で解くものとする.単一のレゾルベントの多項式をフィルタに採用すれば行列分解に掛かるコストは最小にできるが,実現できる伝達特性はあまり良くないので近似対の残差もあまり小さくならない.しかし直交化と併せたフィルタの適用を数回反復して改良すれば,残差の小さい近似対が得られる.

◎ 対称行列の近似固有ベクトルと一般行列特異ベクトルのシャープな誤差評価
○中務 佑治 (国立情報学研究所)

対称行列の近似固有ベクトルの誤差評価にはDavis-Kahanの古典的結果が広く使われる.しかし,射影法(Rayleigh-Ritz法)を用いて抽出された近似固有ベクトルの誤差はDavis-Kahanで評価すると過剰な過大評価になることが多い.本研究ではRayleigh-Ritz法で得られた固有ベクトルに対し(使う情報を用いて改良できないという意味で)シャープな誤差評価を与える.多くの場合Davis-Kahanを大きく改善することができる.同様の結果を射影法で計算される特異ベクトルに対しても導出する.

◎選択的中間固有対計算と有機デバイス材料への応用
○星 健夫 (鳥取大), 李 東珍 (名古屋大), 桑田 亨成 (鳥取大), 角田 皓亮 (鳥取大), 曽我部 知広 (名古屋大), 張 紹良 (名古屋大)

番目を指定した選択的中間固有対計算(k-th eigenvalue problem, k-ep)手法とソルバーコードの発展,および,大規模(100万次元以上)疎行列問題への応用を報告する.産業問題として,フレキシブル(紙のように柔らかい)デバイスの基盤材料である,有機半導体薄膜を取りあげた.デバイス性能は,乱れのある系における特定(最高占有準位付近)固有対の寄与が支配的であるため,当該固有対だけを選択的に計算する需要が生じる.

セッション3:行列・固有値問題の解法とその応用(3) (13:30 – 14:50) 座長:TBA
【招待講演】Generalized Krylov subspace methods for l_p-l_q minimization with application to image restoration
○Reichel Lothar (Kent State University), Buccini Alessandro (Kent State University), Huang Guangxin (Chengdu University of Technology), Lanza Alessandro (University of Bologna), Morigi Serena (University of Bologna), Sgallari Fiorella (University of Bologna)

This talk presents new efficient approaches for the solution of l_p-l_q minimization problems based on the application of successive orthogonal projections onto generalized Krylov subspaces of increasing dimension. The subspaces are generated according to the iteratively reweighted least-squares strategy for the approximation of
l_p- and l_q-norms or quasi-norms by using weighted l_2-norms. Computed image restoration examples illustrate the performance of the methods discussed.

◎積型Bi-CG法における包括的な安定化多項式の提案
○相原 研輔 (東京都市大学)

積型Bi-CG法は,安定化多項式の違いによりCGS法,Bi-CGSTAB法,Bi-CGStab2法,Bi-CGstab(L)法,GPBi-CG法などがあるが,これらを包含する新しい安定化多項式を提案する.提案する多項式はL+1個のパラメータを持ち,その選択によっていずれの解法へも帰着できる.また,残差を局所的に最小化するようにパラメータを決定する方法をGPBi-CGstab(L)法と名付け,その有効性を数値実験により示す.

行列のグレースケール画像を用いたBiCG法の収束予測の試み
○太田 凌 (筑波大学大学院図書館情報メディア研究科), 長谷川 秀彦 (筑波大学図書館情報メディア系)

本研究ではSuiteSparse Matrix Collectionの非対称疎行列875個を係数とする連立一次方程式に対してBiCG法の収束予測を試みた. 非零要素パターンと値から256階調のグレースケール画像を生成し, BiCG法の収束予測をする二値分類器を作成した. 画像のサイズを変え, 評価には5-fold交差検証を行い, 収束する行列234個, 収束しない行列234個を用いて学習とテストを行った. その結果, 倍精度演算で前処理無しの場合に112×112(pixel)の時, 約76%の正答率で収束を予測できた.

セッション4:行列・固有値問題の解法とその応用(4) (15:00 – 16:20) 座長:TBA
◎行列余弦関数に対する数値的検証法
○佐藤 大 (岩手大学), 宮島 信也 (岩手大学)

行列余弦関数の値を含む区間を数値計算により求める方法を提案する. この方法は数値計算による固有分解に基づくものであり, いくつかの仮定下で行列の次元の3乗に比例する演算回数で実行可能である. 数値例により, この方法の有効性を示す.

◎Computing intervals containing Moore-Penrose inverses
○Miyajima Shinya (Iwate University)

An algorithm is proposed for computing intervals containing the Moore-Penrose inverses. This algorithm is based on the Ben-Israel iteration. We particularly emphasize that the algorithm is applicable even for rank deficient matrices.

Inverse scaling and squaring の改善による行列対数関数の高精度計算法
○中村 真輔 (秋田県立大学)

スカラの関数と同様の定義により得られる行列関数のひとつとして行列対数関数があり,機械学習への応用が期待されている.その計算法のひとつとして行列平方根のための Newton 法と有理関数近似を組み合わせた inverse scaling and squaring が知られている.ただしこの計算法では Newton 法から有理関数近似へ移る際に大きな桁落ちが発生する場合があるため,その改善手順について提案する.

◎二重指数関数型公式を用いた行列対数関数の計算について
○立岡 文理 (名古屋大学), 曽我部 知広 (名古屋大学), 宮武 勇登 (大阪大学), 張 紹良 (名古屋大学)

本講演では数値積分による行列対数関数の計算を考える.従来はGauss-Legendre求積を用いて計算されてきたが,入力行列が悪条件なときは被積分関数が端点で急激に変化し収束性が悪化しうる.そこで本講演では,端点特異性を持つ被積分関数にも有効な二重指数関数型(DE)公式に着目し,誤差解析に基づいた適切な積分区間の与え方を示した上で,DE公式の有用性を数値的に検証する.