日本応用数理学会 2020年研究部会連合発表会
このたび日本応用数理学会の第16回研究部会連合発表会は
中止されることになりました。詳しくは以下のウェブページをご覧ください。
https://union2020.jsiam.org/5499
講演募集
講演申し込みは締め切りました。
暫定プログラム
3月4日 (水) 会場:Room D (6317)
行列・固有値問題の解法とその応用(1) (11:00 – 12:20) 座長:TBA
エルミート行列レゾルベントの二次形式に対するシフト付きランチョス法
○保國 惠一 (筑波大学)
ランチョス法が与える縮減行列によりエルミート行列レゾルベントの二次形式を計算することを考える。ヤコビ行列レゾルベントの(1, 1)成分はランチョス法に8回の演算を追加すると計算でき、シフト付きランチョス法は反復回数の2倍の数のモーメントを一致させて対象とする二次形式を近似すること、及び本手法が破綻することなく解を与える条件を示す。従来法と比較した提案法の有効性を数値実験で示す。
Global Krylov部分空間法に対する相互作用型残差スムージング
○相原 研輔 (東京都市大学)
短い漸化式を用いるKrylov部分空間法では,残差ノルムの振動により丸め誤差が拡大し,偽収束が起きる.この問題を改善するため,最近,相互作用型残差スムージングが提案された.これは,スムージング前後の反復列が丸め誤差の影響を抑えるように相互作用する新しい平滑化スキームである.本発表では,この手法を行列方程式などに有効なGlobal Krylov部分空間法にも適用できるよう拡張し,その有効性を数値実験により示す.
非線形力学系のためのKrylov部分空間法
○橋本 悠香 (NTT / 慶大), 野寺 隆 (慶大)
時系列データ解析の手法のひとつとして,データが非線形力学系から生じたと考え,力学系の時間発展を表す作用素,Perron-Frobenius作用素を推定する方法が注目を集めている.Perron-Frobenius作用素は,Hilbert空間上の線形作用素として定義されるため,これを推定するためのKrylov部分空間法が利用できる.しかし,上記問題にKrylov部分空間法を適用する場合,最終的に得たい近似が古典的な問題設定におけるものとは異なる場合がある.本研究は,非線形力学系にKrylov部分空間法を適用した際の解析を行い,その意味について述べる.
Arnoldi型反復を用いたblock SS-CAA法の改良
○今倉 暁 (筑波大学), 櫻井 鉄也 (筑波大学)
一般化固有値問題および非線形固有値問題に対する有力な超並列固有値解法として、複素モーメント型固有値解法が知られている.これらの解法は、固有対精度を改善するために、反復計算と組み合わせて用いられる.本研究では,block Arnoldi法に基づく複素モーメント型固有値解法であるblock SS-CAA法の収束性改善を目的とし、Arnoldi型反復を適用する新しい手法を提案する.また、誤差解析および数値実験から提案法の有効性を示す.
行列・固有値問題の解法とその応用(2) (13:30 – 14:50) 座長:TBA
[招待講演:40分] 行列理論からみた最小作用の原理について
○鷲尾 巧 ((株)UT-Heart研究所)
最小作用の原理では、力学系の運動は作用積分を最小にするような軌道に沿って実現されると主張する。この最小という言葉使いは誤解を招きやすく、例えば調和振動子の場合には時間範囲を半周期よりも大きくとると運動方程式が与える軌道は作用積分の極値となるものの最小ではないことが行列の固有値理論から容易に示せる。本講演では、作用積分を時間方向に離散化し空間座標に対するテーラー展開を適用した際に生じる二次形式の固有値分布を解析することにより、作用積分の不定値性が古典力学的軌道や量子力学におけるファインマン経路積分など物理に及ぼす影響について考察する。
ノイズを含むデータに対し概収束を保証する動的モード分解の計算手法
○相島 健助 (法政大学)
動的モード分解は高次元時系列データに対する有力な解析手法であり,様々な観点から精力的に研究が行われている.動的モード分解の計算には特異値分解がよく用いられるが,データが確率的なノイズを含む場合の理論解析は少なく,収束性を議論する数学的枠組み自体が曖昧なのが現状である.本発表では,動的モード分解の背景となるKoopman作用素の性質に着目したノイズの統計モデルを与え,概収束を保証する動的モード分解の一般的な計算手法を示す.
少数の実数シフトのレゾルベントで構成されたフィルタによる実対称定値一般固有値問題の下端固有対の解法について
○村上 弘 (首都大学東京)
実対称定値一般固有値問題の近似固有対を求めるためのフィルタとして,少数のレゾルベントの線形結合の作用のチェビシェフ多項式であるものを採用する.レゾルベントのシフトに複素数を用いる場合の定式化は,十分に良いものが既に得られている.しかしレゾルベントのシフトに実数だけを用いる場合の良い定式化は,問題を固有値が下端にある近似固有対を求める場合に限定しても,まだ得られていないので,それについて考察を行う.
行列・固有値問題の解法とその応用(3) (15:00 – 16:20) 座長:TBA
[招待講演:40分] Computing intervals containing matrix fractional powers
○宮島 信也 (岩手大学)
Two numerical algorithms are proposed for computing interval matrices containing the matrix fractional powers. These algorithms are based on verified block diagonalization (VBD) recently rediscovered by the author. The first algorithm uses the VBD based on a numerical spectral decomposition, and involves only cubic complexity under an assumption. The second algorithm adopts the VBD based on a numerical Jordan decomposition, and is applicable even for defective matrices.
行列指数関数に対する数値的検証法の改良
○中村 圭汰 (岩手大学), 宮島 信也 (岩手大学)
行列指数関数の関数値に対する数値的検証法がMiyajimaにより提案されている。この方法ではψ_1関数と呼ばれる(スカラー)関数の関数値を包含する区間が計算される。この計算において区間の半径が増大する事例が発見された。この増大は最終的に得られる行列指数関数値を包含する区間の半径の増大を引き起こす。本講演ではψ_1関数値を包含する区間の計算方法を改良することにより、Miyajimaの方法よりも一般に小さな半径を与える方法を提案する。
行列のすべての固有値に対するロバストな数値的検証法
○今 貴一 (岩手大学), 宮島 信也 (岩手大学)
行列のすべての固有値に対する数値的検証法については、いくつかの方法が知られている。これらの方法は行列の次元の3乗に比例する演算回数で実行可能な一方、数値計算により得られた固有ベクトルから構成される行列が悪条件である場合に破綻する。本講演では、数値計算によるシュール分解と対角行列による相似変換を利用することにより、行列の次元の3乗に比例する演算回数で実行可能かつ上記の行列が悪条件でも破綻しない方法を提案する。
行列・固有値問題の解法とその応用(4) (16:30 – 17:30) 座長:TBA
Convergence analysis of inner-iteration preconditioned GMRES method for least squares problems
○LIAO ZEYU (The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI), HAYAMI KEN (The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI, and NII)
We will explain the super-linear convergence of the inner-iteration preconditioned GMRES method for least squares problems, by considering the effect of clustered eigenvalues of the preconditioned coefficient matrix. We show that the theoretically predicted convergence behavior matches numerical experiment results.
特異対称系に対するGMRES法とRRGMRES法の数値実験による収束解析
○杉原 光太 (国立情報学研究所), 速水 謙 (国立情報学研究所 総合研究大学院大学)
辺要素有限要素法を用いた電磁場解析等で生じる特異対称系において,右辺が係数行列の値域に属さない場合と属する場合について,丸め誤差に強いGMRES法とRange Restricted GMRES (RRGMRES)法の収束性を数値実験により比較する. まず,右辺が値域に属さない場合,GMRES法よりRRGMRES法の方が収束が良い系があることを示し,原因を論じる.次に,GMRES法の残差ノルムが右辺の値域に属さない成分のノルムに収束しない原因を論じる. 最後に,右辺が値域に属する場合についても,両手法の収束性を比較する.
特異な大規模疎行列の4倍精度演算を用いたLU分解
○鈴木 厚 (大阪大学 サイバーメディアセンター)
複合材料による弾性体方程式や半導体問題のドリフト拡散方程式の離散化で得られる大規模疎行列の条件数は非常に大きくなることが知られている. 並列計算向けの手法であるFETI領域分割法では部分領域の人工境界にNeumannデータを与えるため, 部分剛性行列は特異になる. 行列の核の空間がFETI反復法の構成に重要であるが, 条件数が大きい場合はLU分解の過程で浮動小数点演算による擾乱のため, 行列のランクの数値的な決定が難しくなる. 行列に対するスケーリング前処理と4倍精度演算の活用により DOI:10.1002/nme.4729 で提案したアルゴリズムの適用範囲を拡大できることを示す.