第29回単独研究会(SWoPP2020)

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会 第29回研究会

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会では,第29回研究会を開催致します.本研究会は「2020年並列/分散/協調処理に関する『福井』サマー・ワークショップ (SWoPP2020)」において,電子情報通信学会,情報処理学会の6研究会との連携により開催されます.


オンライン実施について
  • zoomでの実施を検討しております。詳細については追ってアナウンス致します。


参加申込みフォーム
*オンライン開催のため、事前参加登録制とさせて頂きます。研究会へ参加を希望される方は、下記フォームより参加登録を行ってください。

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    プログラム

    7月30日 (木) 会場:オンライン

    セッション1:MEPA-1 固有値・特異値問題(14:00 – 15:00) 座長:深谷 猛(北海道大学)

    • 講演1(14:00 – 14:30)
      複素モーメント型部分特異値分解法
      ○ 今倉 暁(筑波大), 櫻井 鉄也(筑波大)
      概要:本講演では,特定区間内部の特異値に対応する部分特異値分解計算のための複素モーメント型アルゴリズムを提案する.また,非線形変数変換を用いた精度改善手法を提案し,その有効性を数値実験から検証する.提案法は複素モーメント型並列固有値解法のアルゴリズムに基づく手法であり,階層的並列性に基づく高いスケーラビリティを示すことが期待される.
    • 講演2(14:30 – 15:00)
      実対称固有値問題向けのブロックヤコビ法に対する組み合わせ的前処理
      ○ 久賀谷 匡貴(電気通信大学), 山本 有作(電気通信大学)
      概要:本発表では,実対称固有値問題に対するブロックヤコビ法の収束を加速する組み合わせ的前処理を提案する.ブロックヤコビ法では各ステップでノルム最大のブロックを消去するが,ブロックサイズが大きくなるとブロックのノルムが均等化し,この戦略が有効に働かなくなる.提案手法では,行と列の置換により絶対値の大きな要素を予め対角ブロックに集めることで,この課題を解決する.数値実験で,様々なサイズのテスト行列に提案手法を適用した結果,収束性向上を確認した.

    セッション2:MEPA-2 線形方程式とアプリケーション(15:15 – 16:45) 座長:相原 研輔(東京都市大学)

    • 講演3(15:15 – 15:45)
      時空間行列に対するGMRES上限解析へのSAMAの適用
      ○依田 凌(東京大学), 中島 研吾 (東京大学), Matthias Bolten(University of Wuppertal), 藤井 昭宏(工学院大学)
      概要:線形時間発展方程式の離散化により得られる時空間行列は,各時間で係数が変動しない場合に多重度を持つJordanブロック行列になり,スペクトル解析が数値的に難しいことが知られている.これを克服するSemi-algebraic mode analysis (SAMA)が提案されており,本研究では時空間行列に対するGMRESの上限解析に適用する.正しくスペクトルや残差上限が解析できるだけでなく,そのオーダリングにより計算量が削減されることを示す.
    • 講演4(15:45 – 16:15)
      複素対称線形方程式に対する反復法におけるIC分解前処理の最適実装
      ○ 桝井晃基(名古屋大学)、荻野正雄(大同大学)、片桐孝洋(名古屋大学)
      概要:高周波電磁場問題などで得られる複素対称線形方程式は収束性が悪いことが知られている.反復法における前処理としてはIC(0)(不完全コレスキー分解)前処理が広く使われている.一方で,フィルインを考慮したIC(1)等はあまり使われておらず,その有効性は自明ではない.特に,高周波電磁場解析問題については研究例が少なく,最適な前処理手法は確立されていない.そこで今回はCSR形式向けのIC(1)前処理付き反復法を実装し,電磁場問題に適用した時の性能評価について報告する.
    • 講演5(16:15 – 16:45)
      格子H行列法を用いた実アプリの分散メモリ並列化
      ○ 伊田明弘(東京大学情報基盤センター)、安宅正(富士通株式会社)、古屋篤史(富士通株式会社)
      概要:低ランク近似手法は、科学技術計算に現れる密行列に対する高速計算手法として近年注目を集めている。格子H行列法は低ランク近似手法の最新手法であり、高圧縮率でありながら効率的な実装・通信パターン構築が容易であるという特徴を持つ。本公演では、格子H行列法を用いて実アプリ(特にマイクロマグネティクス計算)を分散メモリ並列化する手法について論じ、計算性能の評価結果を紹介する。

    セッション3:MEPA-3 TBD(17:00 – 18:20) 座長:保國 惠一(筑波大学)

    • 招待講演1(17:00 – 17:40)
      Verified numerical computation for matrix real powers
      ○ 宮島信也(岩手大学)
      概要:Two numerical algorithms are proposed for computing interval matrices containing the matrix real powers. These algorithms are based on verified block diagonalization (VBD) recently rediscovered by the author. The first algorithm uses the VBD based on a numerical spectral decomposition, and involves only cubic complexity if the absolute value of the power exponent is not too large. The second algorithm adopts the VBD based on a numerical Jordan decomposition, is applicable even for defective matrices, and involves quartic complexity. Numerical results show effectiveness of the algorithms.
    • 招待講演2(17:40 – 18:20)
      生体現象を理解するための分子動力学モデルとその時間積分法を行列と固有値から考える
      ○ 鷲尾巧(UT-Heart研究所, 東京大学)
      概要:筋肉の収縮や弛緩のような生体現象を根本的に理解するためには、個々の分子モーター単体の動作のみならず集団的な協調性をもシミュレートする必要があり、時間的には秒オーダーに渡る計算が必要である。一方で現状の分子動力学ではその時間刻みがフェムト秒(10のマイナス15乗)オーダーに制限されておりミリ秒オーダーの計算さえ困難な状況にある。本講演では、時間刻み幅を大きくとるための新たな数理モデルや時間積分法の可能性を行列と固有値の理論から考える。