日本応用数理学会 2020年度年会

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会では,日本応用数理学会2020年度年会におきましてオーガナイズドセッションを開催致します.
  • 会期:2020年9月8日(火)〜10日(木)
  • 会場:オンライン開催
* オンライン開催に関する注意事項は年会ホームページをご確認ください。

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暫定プログラム

9月8日 (火) 会場:C
行列・固有値問題の解法とその応用(1) (16:20 – 17:40) 座長:深谷 猛(北海道大学)
残差スムージングによるGlobal Krylov部分空間法の収束性改善 / ○相原 研輔 (東京都市大学)
Global Krylov部分空間法は,連立一次方程式に対するKrylov部分空間法を線形の行列方程式に適用できるよう拡張したものである.本講演では,残差ノルムの振動が起きる短い漸化式を用いた解法群に焦点を当て,残差スムージングを用いて収束性の改善を図る.特に,最近提案された相互作用型の残差スムージングを応用することで,収束振る舞いを滑らかにするだけではなく,近似解精度の向上も同時に達成する手法を示す.
レトラクションの逆写像を用いた幾何学的共役勾配法の数値線形代数への応用 / ○佐藤 寛之 (京都大学), 竺 筱晶 (上海電力学院)
行列補完問題や対称行列の近似的同時対角化問題は,リーマン多様体上の最適化問題として定式化することができる.本講演では,こうした最適化問題の解法として,探索方向を計算する際にレトラクションの逆写像を用いるリーマン多様体上の新たな非線形共役勾配法を提案し,その応用について紹介する.さらに,提案手法の大域的収束性などの理論的な議論および,数値実験による有効性の検証を行う.
エルミート一般化固有値問題に対するBlock SS-Hankel法の固有ベクトル精度改善法 / ○来栖 壮馬 (筑波大学), 今倉 暁 (筑波大学), 櫻井 鉄也 (筑波大学)
近年,一般化固有値問題に対する周回積分型解法の一つであるBlock SS-Hankel法に対して,エルミート行列向けの改良法が提案された.しかしながら,エルミート行列向けのBlock SS-Hankel法は固有ベクトルの精度は悪化する問題点がある.本研究では,固有ベクトルに対する最小二乗問題に基づき,計算コストを削減しつつ固有ベクトルの精度を向上させる方法を提案する.数値実験から提案法の有用性を確認する.
実数シフトのレゾルベント少数で構成されたフィルタを用いた実対称定値 一般固有値問題の下端付近の固有値を持つ固有対の近似解法について  / ○村上 弘 (東京都立大学)
実対称定値一般固有値問題Av=λBvの近似固有対を求めるためのフィルタとして,少数のレゾルベントの線形結合の作用のチェビシェフ多項式を用いる.特性の優れたフィルタを構成できる既提出の方法では,レゾルベントのシフトは複素数であり,複数のシフトを実数だけにすることはできない.そこで今回は,固有値が下端付近にある固有対を求める場合に限定して,フィルタを実数シフトのレゾルベント2つから構成して,それを用いた実験の例を示す.
9月9日 (水) 会場:C
行列・固有値問題の解法とその応用(2) (9:10 – 10:30) 座長:相原 研輔(東京都市大学)
特異系に対するGMRES法とRRGMRES法の収束解析 / ○杉原 光太 (国立情報学研究所), 速水 謙 (国立情報学研究所 総合研究大学院大学)
辺要素有限要素法を用いた電磁場解析等で生じる特異系において,右辺が係数行列の値域に属さない場合,丸め誤差に強いGMRES法とRange Restricted GMRES (RRGMRES)法の収束性を,理論および特異対称系に対する数値実験により比較する. まず収束性をアルゴリズムを像空間とその直交補空間の成分に分離することにより証明する.さらにGMRES法が数値的に収束が困難な原因はHessenberg行列の最小特異値が微小になるためである事を示し,その理由を示す.
ノイズを含むデータに対する動的モード分解の推定精度の理論解析 / ○相島 健助 (法政大学情報科学部)
動的モード分解とは,時系列データを解析する有用な技術であり,数値線形代数の観点からは,行列の特異値分解およびレイリー・リッツの技法を用いて主要な固有対を求める計算手法と解釈できる.本発表では,ある種の確率的なノイズを含む場合の行列データに対する動的モード分解に対して理論解析を行い,求めるべき不変部分空間への確率的な意味での収束速度を示す.
Shift-invert Arnoldi法による作用素ベクトル積近似の収束性解析 / ○橋本 悠香 (NTT / 慶應大学), 野寺 隆 (慶應大学)
近年,時系列データ解析の手法のひとつに,データが非線形力学系から生じたものと考え,力学系の時間発展を表すPerron-Frobenius作用素を推定する方法が注目を集めている.Perron-Frobenius作用素は,Hilbert空間上の線形作用素として定義されるため,これを推定するためのKrylov部分空間法が利用できる.一般的には,線形作用素をあるベクトルへ作用させたものをKrylov部分空間上で近似する問題となる.本発表では,Krylov部分空間法としてShift-invert Arnoldi法を適用した場合の収束性解析を行う.
最小作用の原理における作用積分の不定値性について / ○鷲尾 巧 (UT-Heart研究所/東京大学)
最小作用の原理では, 力学系の運動は作用積分を最小にする軌道に沿うと主張する. しかし現実にはポテンシャルによっては一定の時間の後に古典軌道の最小性は失われ単なる極値点に変化する. 本講演では行列の固有値解析によりどのようにして不定値性が現れるのか考察する. さらに作用積分の不定値性が量子力学におけるファインマンの経路積分にどのような影響を与えうるか調和振動子を例に考える.
行列・固有値問題の解法とその応用(3) (10:40 – 12:00) 座長:保國 惠一(筑波大学)
Oakbridge-CXにおけるPipelined CG法へのAMG前処理の適用 / ○依田 凌 (東京大学), 中島 研吾 (東京大学), 藤井 昭宏 (工学院大学)
高並列環境における集団通信関数は,十数段の通信回数が必要となり通信時間が増大するため,通信回避アルゴリズムが重要である. Ghysels等は非同期集団通信を用いて内積計算のための集団通信を隠蔽するPipelined CG法を提案した. 本研究ではSmoothed Aggregationに基づくAMG前処理をPipelined CG法に適用し,Oakbridge-CXにおける評価結果を紹介する.
縦長行列の列ピボット付きQR分解に対するコレスキーQR型アルゴリズムの検討 / ○深谷 猛 (北海道大学), 中務 佑治 (オックスフォード大学), 山本 有作 (電気通信大学)
列ピボット付きQR分解は,Rank Revealing QR分解の計算等に用いられ,行列の低ランク近似等の応用を持つ。一方,近年,縦長行列のQR分解(列ピボットなし)に対して,コレスキーQR型のアルゴリズムの有効性が,高性能計算の分野で確認されている。そこで,本発表では,縦長行列の列ピボット付きQR分解に対するコレスキーQR型アルゴリズムを検討し,数値実験によりアルゴリズムの性能を検証する。
カーネルリッジ回帰へのBLR行列近似の適用法検討 / ○伊田 明弘 (東京大学), 今倉 暁 (筑波大学)
カーネルリッジ回帰は、教師あり機械学習法の一種である。カーネルリッジ回帰では、グラム行列を係数行列に持つ連立一次方程式を解く必要がある。通常、グラム行列は密行列であり、連立一次方程式の求解には、O(N^2) の計算機メモリとO(N^3)の演算量が必要になる。本研究では、グラム行列をBLR行列(低ランク構造行列の一種)で近似し連立一次方程式を求解することにより、O(N ^1.5) の計算機メモリとO(N^2)の演算量で、カーネルリッジ回帰を行う手法を検討する。
特異な大規模疎行列の4倍精度演算を用いたLU分解 / ○鈴木 厚 (大阪大学 サイバーメディアセンター) 
複合材料による弾性体方程式や半導体問題のドリフト拡散方程式の離散化で得られる大規模疎行列の条件数は非常に大きくなることが知られている. 並列計算向けの手法であるFETI領域分割法では部分領域の人工境界にNeumannデータを与えるため, 部分剛性行列は特異になる. 条件数が大きい場合はLU分解の過程で浮動小数点演算による擾乱のため, 行列のランクの数値的な決定が難しくなる. 行列に対するスケーリング前処理とピボット遅延部分の高精度演算のための4倍精度演算の活用により DOI:10.1002/nme.4729 で提案したアルゴリズムの適用範囲を拡大できることを示す.