日本応用数理学会 2021年研究部会連合発表会

開催概要
    • 日程:2021年3月4日 (木) 〜 5日 (金)
    • 開催方式:オンライン開催
    • 連合発表会全体のページ:http://union2021.jsiam.org/

講演募集

講演募集は締め切りました。


暫定プログラム
3月4日 (木) 会場:Room A

行列・固有値問題の解法とその応用(1) (9:40 – 11:00) 座長:廣田 悠輔(福井大学)
フィルタ対角化法に用いる初期ベクトルの組に改良を加える試み
○村上 弘 (東京都立大学)

フィルタ対角化法を用いて,実対称定値一般固有値問題の固有対でその固有値が指定された区間にあるものを一斉に近似して求める.その際に,フィルタに適用する最初のベクトルの組として各成分が一様乱数から生成されたものをそのまま用いるのではなくて,あらかじめ適切な処理を加えて求めたい固有ベクトルの割合を高めたものを用いる.そのことにより近似固有対の精度を向上させることを試みる.

二等分点以外を分割点に用いる帯行列分割統治法の計算量評価
○廣田 悠輔 (福井大学)

実対称帯行列の固有値問題に対する分割統治法では,二等分点以外の点を適切に選んで行列を再帰分割すると,二等分点のみを用いた場合に比べて解法の計算量を削減できる.特にデフレーションが生じない仮定のもとでは,計算量を厳密最小化する分割点が動的計画法により現実的な時間で求められる.本発表では,デフレーションが生じない仮定のもとで計算量を最小化および準最小化するように選ばれた分割点を,デフレーションが生じる現実的な状況下の分割統治法で用いた場合の計算量の評価結果について報告する.

Brauerの定理を利用した正方行列のスペクトル半径の上限に対する数値計算法
○伊五澤 彩乃 (岩手大学), 宮島 信也 (岩手大学)

複素正方行列Aのスペクトル半径の上限を数値的に求める方法を提案する. この方法はBrauerの定理と精度保証付き数値計算を利用したものであり, Aが非Hermite行列の場合でも適用可能である. 数値実験により, 多くの場合において, 提案する方法はAのすべての固有値に対する精度保証付き数値計算を単純に応用した方法よりもタイトな上限を与えることを示す.

四元数行列のすべての標準固有値に対する 精度保証付き数値計算
○丹野 遼太郎 (岩手大学), 宮島 信也 (岩手大学)

四元数を成分にもつn次正方行列の右固有値は一般に無限個存在する. それらの中には常に, 虚部が非負の複素数であるものが重複を込めてちょうどn個存在する. これらn個の右固有値は標準固有値と呼ばれる. 本講演では, すべての標準固有値を包含するn個の複素区間(複素平面上の円盤)を数値的に算出する方法を提案する. また, 数値実験により, 提案した方法の有効性を示す.

行列・固有値問題の解法とその応用(2) (11:10 – 12:30) 座長:相島 健助(法政大学)
特異対称系に対するGMRES法とRRGMRES法の数値実験と収束解析
○杉原 光太 (国立情報学研究所), 速水 謙 (国立情報学研究所 総合研究大学院大学)

電磁場解析等で生じる特異対称系において,右辺が係数行列の値域に属さない場合,丸め誤差に強いGMRES法とRange Restricted GMRES (RRGMRES)法の収束性を,数値実験ならびに理論から比較する. 両手法の破綻ならびに収束に関する理論を使い,GMRES法が理論と異なり,数値実験では収束不十分な時がある原因を報告する.またRRGMRES法の像空間成分が正則系へのGMRES法と等価であることを示し,その収束性を理論ならびに数値実験から解析する.

Behaviour of GMRES and block GMRES for matrices with multiple and clustered eigenvalues
○LIAO Zeyu (The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI), HAYAMI Ken (National Institute of Informatics and The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI)

We will study the numerical behaviour of GMRES and block GMRES for coefficient matrices with multiple and clustered eigenvalues and try to analyze it.

GMRES(m)法における行列データの低精度化に関する検討
○深谷 猛 (北海道大学,JST さきがけ), 岩下 武史 (北海道大学)

近年,単精度や半精度に代表される,低精度演算・データを積極的に利用した数値計算アルゴリズムの研究開発が活発に行われている。本発表では,疎行列を係数とする連立一次方定式の代表的解法である,リスタート付きGMRES法(GMRES(m)法)のArnoldi過程で用いる係数行列データの低精度化を試みる。様々なテスト行列を用いて,実験的に収束性を調査し,低精度化の可能性を探る。

デコンボリューション問題におけるcondition L-curveの検討
○久保井 五貴 (福井大学), 田中 利佳 (福井大学), 小澤 伸也 (福井大学), 細田 陽介 (福井大学), 高田 雅美 (奈良女子大学), 木村 欣司 (福井大学)

本研究では 2 次元ボケ画像のデコンボリューション問題を設定し,線形反復解法によるボケ画像鮮明化に取組んだ.今回は,対象画像にノイズ有りの問題設定を設け, LSMR法及びLSQR法によるデコンボリューションを行った.その際に,停止条件としてL-curve criterionを採用する.復元度の基準として相対誤差や PSNRを利用し,ノイズ有り画像鮮明化問題に対するLSMR法及びLSQR法の数値特性を評価する.

行列・固有値問題の解法とその応用(3) (13:30 – 14:50) 座長:速水 謙(国立情報学研究所)
Deflation を用いた幾つかの非対称行列用クリロフ部分空間法の性能比較
○高谷 周平 (個人)

正定値対称行列用の解法であるdeflated CG法には初期の研究において複数の流儀があり、Vuikらはそれらを4つに分類した。これら4つのdeflationの技法をCG法以外のクリロフ部分空間法へ適用した線形代数ソルバの開発を筆者は続けている。本講演では、CRS法を含む非対称行列のためのクリロフ部分空間法の幾つかにdeflationの技法を適用して得られた解法と、これらの解法の性能を大規模並列有限要素接触解析問題で比較した結果について報告する。

3次元モデル再構成問題に現れる鞍点型連立一次方程式に対する前処理付き反復法の性能評価
○石川 翔大 (筑波大学), 多田野 寛人 (筑波大学), 齋藤 歩 (山形大学)

3次元物体の連続した断層画像からボリューメトリックモデルと呼ばれる3Dモデルを構成する手法の一つに,鞍点型連立一次方程式の求解を必要とするアプリケーションが存在する. 我々は,鞍点型連立一次方程式のブロック構造を利用して,求解しやすい方程式へ変形することで,高速な求解手法を提案した. 本発表では,同法の内部で現れる複数右辺ベクトルを持つ連立一次方程式に対する前処理付き反復法の性能評価を行う.

Sylvester方程式に対するglobal Krylov部分空間法のresidual gap評価とその改善
○相原 研輔 (東京都市大学), 今倉 暁 (筑波大学), 保國 惠一 (筑波大学)

Sylvester方程式に対して短い漸化式を用いるKrylov部分空間法の数値的な収束性について議論する.具体的には,global BiCGSTAB法やglobal CGS2法で生じるresidual gap(真の残差と漸化式から求まる残差との差)について解析し,反復中の残差ノルムの最大値が初期残差ノルムに比べて相対的に大きいとき,近似解精度が劣化することを示す.また,近似解精度を改善するため,最近提案された相互作用型残差スムージングを適用し,丸め誤差解析と数値実験によりその有効性を示す.

複数右辺ベクトルを持つ線形方程式に対するblock generalized CGS法
○今倉 暁 (筑波大学), 相原 研輔 (東京都市大学), 保國 惠一 (筑波大学)

複数右辺ベクトルを持つ線形方程式に対する有力な解法として知られるblock Krylov部分空間法は、通常のKrylov部分空間よりも広いblock Krylov部分空間を利用して収束性を改善する拡張・改良法である。これまでに様々なKrylov部分空間法のblock版への拡張が提案されているが、CGS系統の解法については、block版への拡張が困難であり、導出されていなかった。本研究では、CGS法の一般化であるgeneralized CGS(GCGS)法に着目し、そのblock版への拡張であるblock GCGS法を導出する。

行列・固有値問題の解法とその応用(4) (15:00 – 15:40) 座長:佐藤 寛之(京都大学)
部分空間を制限する全最小二乗法の効率的な計算手法とその収束解析
○相島 健助 (法政大学情報科学部)

全最小二乗法は,統計における最尤推定を代表として多くの問題に応用される行列計算である.近年の問題の大規模化に伴い,全最小二乗法の応用例は多岐にわたり,入力(観測)行列および解行列に低ランク性を仮定する問題設定が増えてきている.本発表では,低ランク性および像空間に関する制約の下での全最小二乗問題を対象に,入力行列がランダムノイズを含む場合の統計解析を行うことで,効率的な計算手法を与え,その強収束を示す.

ヒルベルト行列と関連するある行列の固有値について
○山本 有作 (電気通信大学)

Hをs×sのヒルベルト行列とし,H’をHの各要素の分母を1ずつ増やした行列,D=diag(1, 2, …, s)として,行列K=(H’)^{-1}HDを考える。本講演では,sが2以上のとき,行列Kが必ず複素固有値を持つことを示す。Kはエネルギー保存型の常微分方程式解法であるAVF collocation法のアルゴリズム中に現れる行列であり,この結果は同解法が並列化不可能であることの1つの証明を与える。