日本応用数理学会 2021年度年会

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会では,日本応用数理学会2021年度年会におきましてオーガナイズドセッションを開催致します.

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暫定プログラム

9月9日 (木) 会場:A
行列・固有値問題の解法とその応用(1) (9:10 – 10:30) 座長:相原 研輔(東京都市大学)
特異値分解のための両側ヤコビ法の複素数行列に対する効率的な実装法 / ○宮前 隆広(福井大学), 高田 雅美(奈良女子大学), 木村 欣司(福井大学), 中村 佳正(大阪成蹊大学)
実行列の特異値分解を行う両側ヤコビ法の実装については, 荒木らの提案がある. 本講演では, その計算法を複素数行列に拡張する. 実行列の計算では, Givens回転をベクトルに適用する際に, sin・cosのいずれかの値を補正することが高精度計算を達成するために重要である. 複素数行列では, そのアイデアを対角成分の実数化と非対角成分の実数化の際にも利用する. それにより, 高精度な特異値分解と直交性の高い特異ベクトルを計算できる.
◎拡張q-戸田方程式の固有値計算への応用 / ○渡邉 凌斗(京都府立大学 生命環境学部 環境・情報科学科), 新庄 雅斗(同志社大学 理工学部), 岩崎 雅史(京都府立大学 生命環境学部)
⼀般的な離散化の拡張の1つとしてq-離散化が知られている。本発表では、まず、可積分系の基礎方程式である⼾⽥⽅程式や、それと関わりが深いロトカ-ボルテラ系のq-離散化について説明する。次に、それらが関連付けられる行列のLR変換について述べる。また、q-戸田方程式やq-ロトカ-ボルテラ系の拡張にも触れ、最後に固有値計算の数値例を示す。
◎実対称帯行列に対する分割統治法の計算量削減のための摂動処理順序の提案 / ○平岡 俊佑(福井大学), 廣田 悠輔(福井大学)
半帯幅がkである実対称帯行列の固有値問題に対する分割統治法は,対角行列とk個のrank-1積(摂動)の和で表される行列の対角化に帰着される.この対角化は,対角行列と1個のrank-1積の和の対角化(摂動処理)をk回繰り返すことにより解かれる.しかしながら,どのような順序でrank-1積を選び対角化するかには自由度がある.本研究では,各摂動処理におけるデフレーションの発生頻度に着目し,分割統治法の計算量を削減する摂動処理順序を提案する.また,数値実験により提案法の有効性を示す.
実数シフトのレゾルベント少数から構成されたフィルタによる実対称定値一般固有値問題の固有値が下端付近の固有対の近似解法について / ○村上 弘(東京都立大学)
実対称定値一般固有値問題の近似固有対をフィルタを用いて求める.固有値問題と対応する少数のレゾルベントの線型結合の作用のチェビシェフ多項式をフィルタとして採用することにする.固有値が下端付近の固有対だけを求めることにして,すべてのレゾルベントのシフトを(最小固有値未満の)実数に制限する場合を扱ってみる.それによる利点は,レゾルベントを与える連立1次方程式の係数が実対称定値行列になることである.
行列・固有値問題の解法とその応用(2) (10:50 – 12:10) 座長:佐藤 寛之(京都大学)
Projection method for eigenproblems of linear nonsquare matrix pencils / ○保國 惠一(筑波大学)
This work extends a projection method for regular eigenproblems to singular cases and provides conditions such that the extended method determines the finite eigenvalues in a prescribed region in the complex plane and the corresponding eigenvectors. Numerical experiments show that the extended method is more robust and efficient than previous methods.
行列実数乗の数値積分に対する定数倍の前処理について / ○立岡 文理(名古屋大学), 曽我部 知広(名古屋大学), 剱持 智哉(名古屋大学), 張 紹良(名古屋大学)
数値積分法による正定値対称行列の実数乗の計算を考える.計算の際に行列を定数倍して固有値分布を変えることで,同じ積分点数でも数値積分の精度が変化する.特にGauss求積では誤差を最小化するためのほぼ最適な定数の選び方が提案されている.本研究の目的は二重指数関数型公式に対して誤差を小さくする定数を選ぶことである.本発表では定数を数値的に選んだとしても誤差を小さくする効果が得られることを報告する.
◎非対称な線形行列方程式に対するglobal GPBiCGstab(L)法の提案 / ○堀内 一樹(東京理科大学), 相原 研輔(東京都市大学), 鈴木 俊夫(東京理科大学), 石渡 恵美子(東京理科大学)
Global Krylov部分空間法は,連立一次方程式に対するKrylov部分空間法を一般の線形行列方程式向けに拡張したものである.一方,非対称連立一次方程式に対し,GPBiCG法とBiCGstab(L)法を融合したGPBiCGstab(L)法が最近導出された.そこで本研究では,この解法のglobal版であるglobal GPBiCGstab(L)法を新たに提案する.ブロック線形方程式やシルベスター方程式に対する数値実験を通して,提案手法が既存の方法に比べて優れた収束性をもつことを示す.
Analysis of the stabilized GMRES method / ○速水 謙(国立情報学研究所 / 総合研究大学院大学 名誉教授), LIAO Zeyu(総合研究大学院大学 複合科学研究科 情報学専攻), 保國 惠一(筑波大学 システム情報系), YIN Jun-Feng(School of Mathematical Sciences, Tongji University)
In 2016 (JSIAM MEPA meeting), we proposed the stabilized GMRES method for singular and severely ill-conditioned systems. (See also https://arxiv.org/abs/2007.10853 .) In this talk, we will analyze why the stabilized GMRES method works using Weyl’s inequality.
行列・固有値問題の解法とその応用(3) (13:20 – 14:40) 座長:保國 惠一(筑波大学)
◎リーマン多様体上の非線形共役勾配法の新たな枠組みと数値線形代数への応用 / ○佐藤 寛之(京都大学)
連立一次方程式の解法である共役勾配法は狭義凸2次関数の最小化アルゴリズムであるが,より一般の関数の最小化アルゴリズムとしてユークリッド空間における非線形共役勾配法が盛んに研究されている.さらに,探索領域をリーマン多様体に一般化することで,非線形共役勾配法を多様体上の最適化問題の求解アルゴリズムに拡張することができる.本講演では,リーマン多様体上の非線形共役勾配法の新しい一般的な枠組みを提案し,その数値線形代数への応用について議論する.
非負制約付き2次計画問題に対する適応型射影SOR法 / ○宮武 勇登(大阪大学), 曽我部 知広(名古屋大学)
非負制約付き2次計画問題および関連する線形相補性問題に対する数値解法として,SOR法の考え方をベースに成分ごとの更新の際に正値に射影を施す射影SOR法が1970年頃から知られている.本講演では,射影SOR法に幾何的解釈を与え,その解釈に基づき緩和パラメータを適応的に制御する適応型射影SOR法を提案する.
CP-ALSについてのHPCからの考察と試み / ○今村 俊幸(国立研究開発法人理化学研究所)
CP-ALSにおいて、k階テンソル分解の計算コアはO(N^{k+1})のKhatri-Rao計算である。HPC的には、compute-intensiveな構造を持っており、適切なループ変換によりGEMMを組み合わせた実装が可能である。一方、高次のTensor-contructionと考えることもできる。このような構造について高性能計算からの考察を行う。さらに、最小二乗法の反復法としての一面についても考察をしなくてはならない。両者の最適化を如何に行うかについて報告したい。
ベイズ推定による超並列計算の性能予測 / ○星 健夫(鳥取大), 小橋 恒士(鳥取大), 山本 有作(電通大), 深谷 猛(北大) 
我々は,実アプリケーション(電子状態計算など)からの需要として,超並列計算(例:スーパーコンピュータを用いた固有値問題計算)の性能予測に取り組んでいる.具体的には,各ルーチンの実行時間Tを,ルーチン内部の数値計算アルゴリズムに基づき,計算コード数Pの関数として数理モデル化(T=T(P))し,ベイズ推定を用いて外挿(P→大)することで,性能予測を行っている.従来研究の発展として,より良い推定手法を試みているので報告する.
行列・固有値問題の解法とその応用(4) (15:00 – 16:20) 座長:深谷 猛(北海道大学)
動的モード分解に対して収束を保証する平均化手法について / ○相島 健助(法政大学)
動的モード分解とは,実験や数値シミュレーションで得られる高次元の時系列データに対する有力な解析手法である.線形代数的な数値計算の観点からは,クリロフ部分空間や特異値分解などが用いられており,様々な計算手法が存在する.本発表では,データが確率的なノイズを含むことを想定し,ノイズに対する自然な統計モデルを構築する.このモデルの下で,種々の計算手法に共通して利用できる平均化手法を提案し,その漸近解析を行うことで収束定理を与える.
◎虚数時間発展法による電子状態計算手法の開発 / ○王 欽林(法政大学情報科学部研究科), 善甫 康成(法政大学情報科学部)
電子状態計算を実時間の時間依存の手法により、外部刺激に対する線形応答として、時間発展の手法を用いて光学特性の解析を行ってきた。通常、時間発展の手法では初期状態として空間差分法から求める固有状態(基底状態)を準備しなければならない。同様の時間発展の手法を用いて、我々は基底状態を求める虚数時間発展法を導入し、すべての計算を同じ枠組みの中でできるようにした。この統合的な手法を解析解が知られているいくつかの系での動作を確認し、単純な分子系の解析へも展開した。
◎Preconditioning行列を用いたChambolle-Pockアルゴリズムの高速化とCT画像再構成への応用 / ○金 鎔采(筑波大学)
Passty frameworkを用いたアルゴリズムの高速化は、並列化および実装の難易度が非常に高く、ごく一部の研究者しか再現できないという限界がある。本研究では、Chambolle-Pock (CP)アルゴリズムにPreconditioning行列を導入し、同時反復型アルゴリズムの利点を最大に活かしながらも、簡便に高速化できる新手法を紹介する。提案手法は、高速化のメカニズムがシンプル、かつ完全に並列化できるという大きな利点がある。提案手法をCT画像再構成に応用した結果、Classical CPと比較し、20倍以上の高速化が実現できた。
◎Passty frameworkを用いたChambolle-Pockアルゴリズムの高速化とCT画像再構成への応用 / ○金 鎔采(筑波大学) 
First-order primal-dualの最新アルゴリズムとして提案されたChambolle-Pock (CP)アルゴリズムは、同時反復型を想定しているため、多くの反復回数(1000回以上)が必要となり、実用化に限界がある。本研究では、CPアルゴリズムにPassty frameworkを導入し、アルゴリズムの高精度化および高速化を実現する。提案手法を最先端のCT画像再構成に応用した結果、30回以内で収束させることに成功した。さらに、正則化としては、1階微分と2階微分を同時に考慮する改良したNonlocal TVを用いることで劇的な画質改善が実現できた。