日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会 第12回研究会
日本応用数理学会「行列・固有値の解法とその応用」研究部会では,第12回研究会を開催します.
- 開催日:2011年11月21日(月)
- 場所:国立情報学研究所22階2208室(〒101-8430 東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
- アクセス:http://www.nii.ac.jp/introduce/access1-j.shtml
- 懇親会について
研究会終了後に国立情報学研究所の所内にて懇親会を予定しています.懇親会に参加をご希望の方はこちらをご参照下さい. - 運営委員会について
第1セッション終了後に運営委員会を開催します.研究部会運営委員の皆様はこちらをご参照下さい.
プログラム
オープニング 主査:松尾 宇泰(東京大学)(10:20)
【セッション1:固有値問題1】座長:片桐 孝洋(東京大学)
- 講演1(10:30~11:00)
実数シフトのレゾルベントの線形結合によるフィルタを用いた実対称定値一般固有値問題の下端側に固有値がある固有対の解法
村上 弘(首都大学東京)概要: 実数シフトのレゾルベントの線形結合により構成されたフィルタ作用素を用いて, 実対称定値一般固有値問題の固有対で下端の区間内に固有値があるものだけを選択的に 求める方法の試みを紹介する.フィルタ作用素を構成する方法の研究を紹介し,実際の 応用例として直方体領域におけるラプラシアンの零ディリクレ境界条件を課した固有値 問題の有限要素法による離散化で得られる行列の実対称定値一般固有値問題を取り扱う.
- 講演2(11:00~11:30)
Wilkinson シフト付き QR 法に対する全成分の収束の理論保証
○相島 健助(東京大学),松尾 宇泰(東京大学),杉原 正顯(東京大学)概要: Wilkinson シフト付き QR 法は収束証明のある固有値計算 アルゴリズムである.ただし,ここでの収束とは,反復行列の 右下の成分の収束を意味し,行列の全成分の振る舞いに 関するものではない.本講演では,行列の全成分の収束を 理論保証し,行列の形では最大ブロックを 2×2 行列とする ブロック対角行列に収束することを示す定理を与える.これに より右下成分の収束速度に関してもすべての場合を尽くした 解析が可能になる.
【セッション2:招待講演】 座長:速水 謙(国立情報学研究所)
- 招待講演(13:00~14:00)
ハンケルテンソルのモード積を用いた有理型関数の多重極推定法
奈良 高明(電気通信大学大学院情報理工学研究科)概要: 有理型関数の任意次数の多重極を境界データから代数演算で再構成する手法を提案する.極の多重度をdとした とき,d=1(単極)の場合は,N個の極を根にもつN次方程式の係数に関する連立一次方程式が導出され,その係数 行列は有理型関数の周回積分からなるハンケル行列となることがよく知られている.本講演では,一般のd重極 の場合,上記N次方程式の係数に関する連立d次方程式が導出できること,これらは周回積分からなるハンケルテ ンソルのモード積として表現できること,さらにハンケルテンソルの性質を用いることで連立一次方程式に帰着 されることを示す.数値例,脳磁場逆問題への応用もあわせて紹介する.
- 講演3(14:00~15:00)
リーマン多様体上の最適化アルゴリズムの数値線形代数への応用
佐藤 寛之(京都大学大学院情報学研究科)概要: 与えられた目的関数の最小点を見つける問題は最適化問題と呼ばれる.従来, ユークリッド空間上の最適化手法が盛んに研究されてきた.問題に制約条件が ない場合は,最急降下法やニュートン法などを適用できるが,制約条件がある 場合にはこれらをそのまま用いることができず,アルゴリズムは複雑になる. しかし, 制約条件を満たす点全体がリーマン多様体である場合には,与えられ た問題を多様体上の最適化問題と見なすことで,最急降下法やニュートン法を多 様体上に拡張した手法を用いることができ,反復列の収束性が保証される.本 講演では,最初にこうしたリーマン多様体上の最適化手法について概説した後, 具体的に,行列の固有値問題や特異値分解がグラスマン多様体やシュティー フェル多様体上の最適化問題に帰着されることを示し,その解法アルゴリズムお よび数値計算結果を紹介する.
【セッション3:固有値問題2,非直交同時対角化】 座長:櫻井 鉄也(筑波大学)
- 講演4(15:10~15:40)
対称行列の逆行列の固有値に対する Kato-Temple 不等式の導出と応用
○山下 巧(京都大学)、木村 欣司(京都大学)、高田 雅美(奈良女子大学)、中村 佳正(京都大学)概要: 対角成分および副対角成分が全て正であるような上二重対角行列 B に対し, その 最小特異値の下界を Kato-Temple 不等式を用いて求めることができる. この下 界を求める際に, 行列 (B B^T)^M (M = 1, 2) の逆行列の対角成分を求める漸化 式が用いられている. 本発表では, この下界を与える Kato-Temple 不等式の導 出について述べるとともに, シフト付き特異値計算アルゴリズムに対して我々が 提案するシフト戦略におけるシフト量の計算法の工夫についても述べる.
- 講演5(15:40~16:10)
時間依存固有値問題の数値解法に関する基礎検討
○新堂 敬隆(神戸大学),谷口 隆晴(神戸大学),山本 有作(神戸大学)概要: パラメータtに依存する行列A(t)に対し,固有値λ(t),固有ベクトルx(t)を求める問題を考える.Baumann & Helmkeは, A(t)が実対称の場合について,λ(t)とx(t)が満たす常微分方程式を導き,この問題の解を追跡するアルゴリズムを提案した. しかし,数値実験は数元程度の極めて小さな行列に対してしか行っていない.本発表では彼らのアルゴリズムを数百元までの 行列に対して適用し,計算量,精度,安定性について評価する.
- 講演6(16:10~16:40)
非直交同時対角化アルゴリズムのハイブリッド戦略についての検討
○廣田 悠輔(神戸大学),山本 有作(神戸大学),張 紹良(名古屋大学)概要: 複数の行列を非直交行列による合同変換で同時対角化する問題(非直交同時対角化問題)は, 独立成分分析など多くの応用を持つ. この問題の数値解法として, 収束特性の異なる複数の反復解法アルゴリズムの長所を取り入れた ハイブリッドアルゴリズムを用いることが考えられる. 本研究では,個別の非直交同時対角化アルゴリズムの収束特性を調査し, 得られた知見をもとにハイブリッドアルゴリズムを構築し,その性能を評価する.
【セッション4:線形・非線形方程式,高精度演算】 座長:直野 健(日立中央研究所)
- 講演7(16:50~17:20)
減速定常反復型前処理付きKrylov部分空間法のための減速パラメータ推定法
○今倉 暁(筑波大学), 櫻井 鉄也(筑波大学)概要: 線形方程式のためのKrylov部分空間法に対する有効な前処理として, 定常反復法を用いる方法が知られている. 本発表では, 減速パラメータを用いて収束性を改善する減速定常反復法の前処理への適用を考える. 減速パラメータと減速定常反復法の収束性の関係性についての解析を通し, 適切な減速パラメータの推定法を提案する.
- 講演8(17:20~17:50)
拡張Aitken加速と拡張Shanks変換を用いた非線形連立方程式の数値解法
石井 政行概要: 非線形連立方程式に用いられるニュートン法、準ニュートン法などといったアルゴリズムは 行列次第で破たんしたりすることもある。さらには、Henrich加速法もデータを多数使用しながら 収束効率は良くないことが知られている。 本研究では、ベクトル版の拡張Aitken加速における収束係数をスカラーにした場合と、それを基に したShanks変換を提案し、数値実験にて有効性を検証した。
- 講演9(17:50~18:20)
高速なScilab用高精度演算環境の実装
○吉川 慧子(東京理科大学),斉藤 翼(東京理科大学),石渡 恵美子(東京理科大学),長谷川 秀彦(筑波大学)概要: 倍精度演算の計算結果を検証するためには高精度演算が必要である. 我々は,倍精度演算のみを用いて4倍精度演算と8倍精度演算をScilabに実装した. しかし8倍精度演算の実装には多くの倍精度演算が必要で, Scilabのみの実装では,その数十~数百倍の実行時間がかかる. これを改善するため,C言語を利用して8倍精度演算の実行時間を 倍精度演算の10~16倍程度に抑えた.本発表では詳細を報告する.
クロージング 幹事:速水 謙(国立情報学研究所)(18:20)
運営委員会
- 日本応用数理学会「行列・固有値の解法とその応用」研究部会 運営委員会(12:30~12:55)
場所:大学院セミナー室(1316C)
国立情報学研究所(3階喫茶室) 開始時刻:18:30~ 会費:4000円程度 懇親会に参加します。 お名前: ご所属: E-mail: 2011年11月10日(木)までに、この参加票を電子メールでお申し込みください。 送付先のEメールアドレス: mepa2011アットマークist.aichi-pu.ac.jp