開催概要
暫定プログラム
3月9日 (水) 会場:Room D
行列・固有値問題の解法とその応用(1) (9:40 – 11:00) 座長:中村 真輔(秋田県立大学)
実対称疎行列の三重対角化におけるオーダリングの適用
○廣田悠輔(福井大学)
我々はこれまでに,帯行列 reduction アルゴリズムをもとにした,ある種の疎構造をもつ実対称疎行列に対する効率的な三重対角化アルゴリズムを提案した.本発表では,本疎行列三重対角化アルゴリズムに対する前処理として行列の行・列を置換する処理(オーダリング)を適用した結果について報告する.
6角形鎖状連結有向グラフの固有値とその応用
○柏原藍(東京高専),南出大樹(東京高専)
化学では,物質の芳香族性を評価するためにNICSという値が用いられている.しかし,電子が増えるにつれてその計算は非常に困難になるため,近似値に関する研究が行われている.例えば,ベンゼン環を一直線状に縮合させたポリアセンに関しては,越高と井手により有向グラフの固有値を用いた値が提案された.本研究では,越高の予想をもとに,一般の環数を持つ6角形鎖状連結有向グラフの隣接行列の固有値がcosを用いた単純な式で明示できることを示す.
ある非対称行列の摂動を受けた対角行列の離散及びアナログ固有値計算
○吉澤真太郎(トヨタ自動車株式会社)
第30回単独研究会報告の進展.正定値対角行列をD, 実列ベクトルをx,yとしたとき, D+xy^Tなどの行列の固有値及び固有ベクトルを同時に求める問題を制約無しの最適化問題として定式化し,その連続的及び離散的解法について考案した.前回の報告結果は厳密解に漸近するアルゴリズムではなかったが,この部分を改良した.
摂動成分を限定する全最小二乗問題に対する統計モデリングと数値解法の漸近解析
○相島健助(法政大学情報科学部)
全最小二乗問題は,観測に対応する行列データが誤差を含む場合,具体的には統計や信号処理等でよく現れる.観測の際に,特定の行列成分においては,誤差の無い信頼できる成分と見なせる場合があり,これは特殊な全最小二乗問題に帰着し,特異値分解により解けることが知られている.ただし,この場合の摂動の統計モデルは一切検討されていないようである.本発表では,摂動に対する自然な統計モデリングを行い,数値解法で得られる部分空間が推定量としての一致性を有することを示す.
行列・固有値問題の解法とその応用(2) (11:10 – 12:30) 座長:相島 健助(法政大学)
摂動理論に基づくジョルダン細胞の推定
○羽勢晃大(東京大学理学部)、須田礼仁(東京大学情報理工学系研究科)
行列の固有値問題の数値解法において、対角化できない行列の固有値を正確に求めるのは難しいとされている。これは、対角化できない行列が持つ2次以上のジョルダン細胞が誤差の影響を受けやすいことが原因の一つである。実際、k次のジョルダン細胞を持つ行列に誤差が加わると固有値はk個の異なる固有値に分かれてしまうことが知られている。このように、浮動小数点数を用いてジョルダン標準形を求めることは困難であると考えられてきた。本論文ではまず、ジョルダン標準形を持つ行列の摂動理論(Lidskii・1965)を基に、行列に誤差を加えて疑似スペクトルを求め、その結果が理論と一致することを確認する。さらにこの結果を用いて疑似スペクトルを見ることで元の行列の近傍に存在するジョルダン細胞の構造を推定することに部分的に成功した。
数値ジョルダン分解に基づく行列余弦関数の精度保証付き数値計算
○佐藤大(岩手大学),宮島信也(岩手大学)
講演者らは2019年日本応用数理学会研究部会連合発表会において, 行列余弦関数に対する精度保証付き数値計算法を提案している. この手法は行列の数値スペクトル分解に基づくものであり, 近似固有ベクトルから成る行列が悪条件の場合に破綻する. 本講演では, 近似固有ベクトルから成る行列が悪条件であっても破綻しない精度保証付き数値計算法を提案する. 提案する手法は数値ジョルダン分解に基づくものである. 数値例により, 提案する手法の特徴を示す.
行列関数のトレースに対する高速な精度保証付き数値計算法
○黒田早紀(岩手大学),宮島信也(岩手大学)
行列関数のトレースに対する精度保証付き数値計算法を提案する. 行列のトレースが固有値の総和と一致することはよく知られている. 提案する手法はこの性質を利用したものであり, 行列関数そのものを精度保証付きで求めるのではなく,行列関数の固有値を精度保証付きで求めることにより, 行列関数のトレースを包含する区間を与える. 数値実験により, 提案する手法の有効性を示す.
クロネッカー構造をもつ大規模行列の実数乗とベクトルの積に対する高速な精度保証付き数値計算法
○宮島信也(岩手大学)
A, B をそれぞれ m, n 次正方行列, I_n を n 次単位行列, ⊗をクロネッカー積, c を mn 次元ベクトル, α を実数とする. 本講演では, (I_n ⊗ A + B ⊗ I_m)^α c に対する精度保証付き数値計算法を提案する. この値の計算は非整数階ポアソン方程式を離散化した際等に現れる. 既存の手法を利用して精度保証付き数値計算を行うと, m^3 n^3 あるいは m^4 n^4 に比例する演算回数が必要となる. これに対し, 提案する手法は m^3 + n^3 に比例する演算回数で実行可能である. 数値実験結果を通じて, 提案する手法の有効性と限界を報告する.
行列・固有値問題の解法とその応用(3) (13:30 – 14:50) 座長:岩下 武史(北海道大学)
行列一般固有値問題の一部の固有対のフィルタの利用による近似解法について
○村上弘(東京都立大学)
フィルタを用いて実対称定値一般固有値問題の固有対で固有値が下端付近のものを近似し解く.それに用いるフィルタは,固有値問題に対応したレゾルベントのシフトが異なるものの線形結合を考えそのチェビシェフ多項式とする.そのようなフィルタの伝達関数は,重複する極を持たない無限遠で有界な有理関数とチェビシェフ多項式の合成になる.要求する条件を満たす有理関数をうまく決めて性質の良いフィルタを構成することをめざす.
非対称連立一次方程式に対するロバストな右前処理付きGPBiCGstab(L)法
○堀内 一樹(東京理科大学),相原 研輔(東京都市大学),鈴木 俊夫(東京理科大学),石渡 恵美子(東京理科大学)
GPBiCGstab(L)法は,非対称連立一次方程式に有効な積型解法の一種である.しかし,右前処理を適用する場合,効率性の観点から前処理行列に関する行列ベクトル積を別のベクトルの線形結合で代用する必要があり,それが原因で数値的不安定性が生じる.そこで本研究では,前処理を適用する際に,上記の代用が不要となる改良アルゴリズムを提案する.数値実験を通して,右前処理した提案手法が従来の方法に比べてロバストであることを示す.
Flying restart付きCG法に対する混合精度演算による近似解精度の向上
○相原 研輔(東京都市大学),尾崎 克久(芝浦工業大学),椋木 大地(理化学研究所)
Flying restartは,反復法のresidual gapを改善し,真の残差を減少させる手法である.しかし,リスタート周期などのパラメータ調整が難しく,また誤差の観点では精度が向上しない場合がある.本講演では,リスタートに付随する部分のみ高精度に計算する混合精度演算により,細かなパラメータ調整をすることなく簡便に誤差を減少させる手法を提案する.CG法に対する数値実験を通して,特に誤差が停滞する悪条件問題に対し,提案手法が有効であることを示す.
GMRES Methods for Tomographic Reconstruction with an Unmatched Back Projector
Per Christian HANSEN (Technical University of Denmark), ○Ken HAYAMI (Professor Emeritus, National Institute of Informatics), Keiichi MORIKUNI (University of Tsukuba)
Unmatched pairs of forward and back projectors are common in X-ray CT computations due to the need for fast algorithms that best utilize the computer hardware. We propose using preconditioned GMRES (AB-,BA-GMRES) to handle the unmatched normal equations. They are simple to implement and rely only on available forward and back projectors. They are equivalent to LSQR and LSMR in the case of a matched projector pair. Numerical experiments show that they exhibit a desired semi-convergence behavior and are suited for large-scale CT reconstruction problems with noisy data.
行列・固有値問題の解法とその応用(4) (15:00 – 15:40) 座長:宮島 信也(岩手大学)
A unified extension of convergence analyses to optimization with Cayley transform over Stiefel manifold
○久米啓太(東京工業大学), 山田功(東京工業大学)
By using generalized Cayley transforms, an optimization problem over the Stiefel manifold can be translated into another optimization problem over a vector space possibly changing after a certain period. Such an adaptive translation enables us to apply directly many powerful optimization techniques, designed originally over a vector space, to a translated problem within each period. We present a unified convergence analysis of optimization algorithms along this translation strategy.
複数機関が分散保持する秘匿データに対するデータコラボレーション解析技術
○今倉暁(筑波大学)、岡田幸彦(筑波大学)、櫻井鉄也(筑波大学)
医療・創薬・金融・ものづくりなど多様な分野において,データ解析のために,生データを共有することが困難である場合がある.このような分散データ非共有統合解析技術としてGoogleが開発したFederated Learningが注目を集めている.近年,我々はFederated Learningとは異なる戦略で分散データ非共有統合解析を可能とするデータコラボレーション解析技術の開発を進めている.本講演では,データコラボレーション解析の概要を示し,数値実験からその有効性を示す.
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