日本応用数理学会 2023年研究部会連合発表会

開催概要

  • 日程:2023年3月8日(水)~10日(金)
  • 会場:岡山理科大学
  • 開催方式:ハイブリッド開催
  • 連合発表会webページ:https://jsiam.org/union2023

暫定プログラム

3月10日 (金) A会場

行列・固有値問題の解法とその応用 (1) (9:20 – 10:40 9:20 – 10:20) 座長:橋本悠香(NTT)

09:20 – 09:40
実対称行列のすべての固有値と不変部分空間の基底に対する精度保証付き数値計算
〇宮島信也(岩手大学)

実対称行列のすべての固有値と固有ベクトルに対する精度保証付き数値計算法が2006年に提案されている. ある固有値が他の固有値と離れている場合には, この方法は対応する固有ベクトルと近似固有ベクトルの差の2ノルムの上限を与える. 一方, 固有値が近接・重複している場合には, この方法はこのような上限を与えない. 本講演では, 固有値が近接・重複している場合に, 対応する不変部分空間の基底とその近似の差の2ノルムの上限を求めるための理論を与える. これにより, すべての固有値と不変部分空間の基底に対する精度保証付き数値計算が可能となる.

09:40 – 10:00
行列のすべての固有値に対する精度保証付き数値計算におけるパラメータ決定法
〇佐藤壮(岩手大学),宮島信也(岩手大学)

保証付き数値計算法が提案されている. この方法は行列の次元の3乗に比例する演算回数で実行可能であり, 数値計算により得られた近似固有ベクトルから成る行列が悪条件でも破綻しない. この方法では, 上記の対角行列を構成するために, パラメータ(正の実数)を決定する必要がある. 本講演では, このパラメータを決定するための新たな手法を提案する.

(講演キャンセル)
一般化固有値問題の固有値に対する破綻しにくい数値的検証法
〇山木瑠菜(岩手大学),宮島信也(岩手大学)

一般化固有値問題 Ax = λBx のすべての固有値に対する数値的検証法がいくつか提案されている. ここで, A, B は正方行列, λは固有値, x はλに対応する固有ベクトルである. これらの方法は B が悪条件である場合に破綻する. 本講演では, 例え B が悪条件であっても, A が悪条件でなければ破綻しない, ほぼすべての固有値に対する数値的検証法を提案する.

10:00 – 10:20
最小二乗問題に対するtwo-subspace randomized extended Kaczmarz法の拡張
〇安達 和晃 (名古屋大学), 曽我部 知広 (名古屋大学), 剱持 智哉 (名古屋大学), 張 紹良 (名古屋大学)

Randomized extended Kaczmarz(REK)法は, 最小二乗問題に対する反復解法の1つである. 近年, REK法の拡張として, 2本の行ベクトル及び列ベクトルにより定まる超平面に射影を行うtwo-subspace randomized extended Kaczmarz(2REK)法が提案された[Wu, Numer. Alg., 2022]. 本発表では, 2REK法を拡張した解法(three-subspace randomized extended Kaczmarz法)を提案し, その有効性を示す.

行列・固有値問題の解法とその応用 (2) (11:10 – 12:30) 座長:相原研輔(東京都市大学)

ある線形回帰モデルに対して直交射影を用いる一致推定量の構成
〇相島健助(法政大学情報科学部)

特定の説明変数が誤差を含む線形回帰モデルのパラメータ推定を考える.このようなパラメータ推定では,最適化問題を定式化し,これを特異値分解やQR分解を用いて数値的に解くことが標準的な手法である.しかしながら,この数値計算による推定量が,漸近一致性を有することが理論保証される回帰モデルは限定的である.本発表では,ある種の制約をもつ線形回帰モデルに対して,直交射影を用いることで漸近一致性を有する推定量が得られることを示す.

離散最適輸送問題に対するBregmanダイバージェンス正則化の誤差評価
〇保國 惠一(筑波大学),榊原 航也(岡山理科大学),高津 飛鳥(東京都立大学)

最適輸送問題はエントロピー正則化を施すことで効率良く近似的に解けることが知られている。一方、最適輸送問題は線形計画問題(LP)であり、LPにエントロピー正則化を施して得られる狭義凸問題の最適値と元のLPの最適値との誤差評価が与えられている。本研究では、離散最適輸送問題にBregmanダイバージェンスを用いた正則化を施すことを提案する。提案する正則化の誤差評価を与え、従来の正則化よりも精度の良い解を与える例を数値実験で示す。

データコラボレーション解析手法に対する精度解析および生存時間分析への応用
〇今倉 暁(筑波大学 システム情報系),角田 亮也(筑波大学附属病院),香川 璃奈(筑波大学 医学医療系),山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系),櫻井 鉄也(筑波大学 システム情報系)

近年,複数機関が分散保持するデータに対するプライバシー保護計算技術として,各機関が独自に構築した次元削減データである「中間表現」を共有するデータコラボレーション解析が提案された.本講演では,機関ごとの中間表現生成関数に着目し,データコラボレーション解析手法に対する精度解析を行う.また,分散データ生存時間分析への応用例として,eICUデータセットを例に提案手法の有効性を示す.

Koopman作用素のノルム評価を用いたニューラルネットワークの汎化誤差解析
〇橋本悠香(NTT), 園田翔(理研AIP),石川勲(愛媛大学),二反田篤史(九州工業大学),鈴木大慈 (東京大学)

ニューラルネットワークの解析において,その汎化性能の解析は主要なトピックのうちの一つである.本研究では,Koopman作用素のノルム評価を用いて,ニューラルネットワークの新しい汎化誤差評価を導出する.本結果は,最終層の非線形関数の役割への着目と,作用素論的な視点の導入により,ノイズをフィルタリングするという意味での,ニューラルネットワークの新たな視点での性質を明らかにするものである.

行列・固有値問題の解法とその応用 (3) (13:50 – 15:10) 座長:廣田悠輔(福井大学)

ブロックLanczos型反復法の精度改善に向けた相互作用型残差スムージング
〇相原 研輔(東京都市大学),今倉 暁(筑波大学),保國 惠一(筑波大学)

複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式に対するブロックLanczos型反復法では,残差ノルムの振動により近似解精度が劣化するため,これを改善する残差スムージングを提案する.提案手法は,近年考案されたスムージング前後の反復列が影響し合う相互作用型のスキームを基盤とするが,スムージングパラメータを行列で定め,さらに補助行列を直交化する新しい形式である.丸め誤差解析と数値実験により,その有効性を示す.

二重指数関数型数値積分公式を用いた行列符号関数計算法の精度および並列性の検証
〇宮下朋也 (電気通信大学),山本有作 (電気通信大学),工藤周平 (電気通信大学)

行列符号関数はシルベスター方程式や固有値問題などで使われる.最近,行列符号関数を積分表示して二重指数型数値積分公式により数値計算を行う方法が中屋らにより提案されており,大粒度並列性を持つことから、並列計算機による高速化が期待される.本発表では,この手法について,行列が対称な場合の誤差上界を与えるとともに,並列計算機上での性能評価結果について報告する.

2本のベクトルが張る平面上での回転による直交変換
〇森 健太(電気通信大学), 山本 有作(電気通信大学), 工藤 周平(電気通信大学)

n次元空間中の2本のベクトルが張る平面上での回転は直交変換となる。これはGivens回転の一般化であるがHouseholder変換と似た機能をもつ。本発表ではこの変換の行列表現を導出し、Householder変換との関係を示す。またこの変換がQR分解のような行列計算に容易に組み込めることや、誤差や計算量の面でもHouseholder変換と同等となることを示す。

単一右辺の連立一次方程式に複数探索ベクトルを利用する共役勾配法
〇鈴木 厚 (理化学研究所 計算科学研究センター)

行列の係数データを再利用して複数ベクトルとの積を計算するSpMMを利用できるように共役勾配(CG)法の拡張を行なった. 単一右辺に対して複数の探索ベクトルを反復開始時に用意することがアルゴリズムの要であるが, 領域分割による部分問題のCG法の収束によって得られた探索ベクトルと解をそれぞれ全体領域で合成することで複数の探索ベクトルを構成する. 適切なタイミングで部分問題の解の情報を取り込むリスタートと以前の探索情報を引き継ぐデフレーション手法を用いることで収束を加速できる. 後者の手法では部分空間での固有値の解析と共に, 残差方程式の弱形式での解を利用する.

行列・固有値問題の解法とその応用 (4) (15:40 – 17:00) 座長:保國惠一(筑波大学)

q-離散戸田方程式の拡張とその時間発展が与えるLR変換について
〇渡邉凌斗(京都大学),新庄雅斗(同志社大学),山本有作(電気通信大学),岩崎雅史(京都府立大学)

可積分な離散戸田方程式は3重対角行列の固有値を計算するqdアルゴリズムの漸化式と等価である。離散戸田方程式のq-離散版であるq-離散戸田方程式もまた3重対角行列の固有値計算に利用でき、その時間発展は3重対角行列のLR変換と関連付けられる。本講演では時間発展がヘッセンベルグ行列の相似変形を与えるようなq-離散戸田方程式の拡張について説明する。さらにimplicit L定理を導入することで、拡張q-離散戸田方程式の時間発展がヘッセンベルグ行列に対するLR変換に関連付けられることを明らかにする。

ある帯行列の固有値固有行列同時解法について
〇吉澤真太郎(トヨタ自動車株式会社)

ある制約付き帯行列と対角行列のランク摂動との対応関係について考察し、相似変換で対称化可能な制約付き帯行列の固有値及び固有行列を同時に求める行列値微分方程式の性質、及び、その方程式の差分化について報告する。

フィルタを用いる固有対の近似解法に対する弱いフィルタによる前処理
〇村上弘(東京都立大学)

固有値問題で固有値が指定区間内の固有対をフィルタを用いて近似する.
ランダムなベクトルの組をフィルタで濾過して必要な固有ベクトルの含有率を高めたベクトルの組を得て,
その線形結合で必要な固有ベクトルが張る不変部分空間の近似基底を構成するが,
ランダムなベクトルの組が必要な固有ベクトルを含有する率が少ないと近似固有対の精度が悪くなる.
そこで予め手間の少ない弱いフィルタを適用して含有率を高めて精度を改善する.

実対称帯行列固有値問題における三重対角化および固有ベクトル逆変換の計算量最小化
上ノ山功基(福井大学),〇廣田悠輔(福井大学)

実対称帯行列の固有対を求める方法の一つに,(1) 与えられた帯行列を三重対角化し,(2) 三重対角行列の固有対を求め,(3) 固有ベクトルを逆変換するものがある.Bischof らは (1) の方法として,帯行列からより半帯幅の小さい帯行列への相似変換を繰り返すことで三重対角行列を得る方法を提案している.この方法の計算量は途中に経由する帯行列の半帯幅に依存して決まり,経由する半帯幅をパラメタとする計算量最小化問題が定式化できることが知られている.本発表では,計算量最小化問題の求解方法を陽に示し,最小化のための計算量が行列の相似変換にかかる計算量に比べて著しく小さいことを示す.また,(3) の計算量を考慮した計算量最小化問題の求解についても述べる.

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