開催概要
- 日程:2024年3月4日(月)~6日(水)
- 会場:長岡技術科学大学
- 開催方式:対面形式
- 連合発表会webページ:https://jsiam.org/union2024/
プログラム
3月5日 (火) C会場
行列・固有値問題の解法とその応用 (1) (9:40 – 10:40) 座長:相原 研輔(東京都市大学)
09:40 – 10:00
gap定理に対する別証明
○山中 佑太(岩手大学), 宮島 信也(岩手大学)
実対称行列の近似固有ベクトルに対する誤差評価式として, gap定理が知られている. この定理の証明は難解であり, フォローするのが大変である. 本講演では, この定理に対する簡単な証明を与える.
10:00 – 10:20
非負行列のPerron根に対する下限の単調増加性
○大友 海斗(岩手大学), 宮島 信也(岩手大学)
Collatzの定理は非負行列のPerron根に対する上限・下限を与える. Adamらはこの定理を拡張し, 数列の形でPerron根に対する上限・下限を与えている. さらに, Adamらは上限となっている数列が単調減少する部分列をもつことを証明している. 一方, 下限となっている数列については, 上限の数列がもつ性質に対応するような結果が与えられていない. 本講演では, 下限の数列が単調増加する部分列をもつことを証明する.
10:20 – 10:40
クロネッカー構造をもつ大規模行列の行列関数のトレースに対する数値的検証法
○黒田 早紀(岩手大学), 宮島 信也(岩手大学)
応用上, 行列関数の値そのものではなく, その値のトレースが求められることがある. この場合, 入力行列がクロネッカー和の形をしていることが多い. 本講演では, 入力行列がクロネッカー和の形をしている場合における, このトレースに対する数値的検証法を提案する. 既存の数値的検証法を利用すると入力行列のサイズの3乗に比例する演算回数が必要となるが, 提案する手法は2乗に比例する演算回数で実行可能である.
行列・固有値問題の解法とその応用 (2) (11:10 – 12:30) 座長:佐藤 寛之(京都大学)
11:10 – 11:30
Koopman作用素に対するKrylov部分空間法とそのHilbert C*-moduleへの拡張
○橋本 悠香(日本電信電話株式会社)
Koopman作用素は写像の合成を表現する線形作用素で,力学系から生じた時系列データの解析等に用いられる.本発表では,Koopman作用を,Krylov部分空間法を用いて,与えられたデータのみから近似する方法について紹介する.通常のKoopman作用素はHilbert空間上で定義され,Krylov部分空間法もHilbert空間上で行われるが,それをHilbert C*-moduleへ拡張することについても議論する.
11:30 – 11:50
JetDMD: 艤装再生核Hilbert空間におけるKoopman作用素のデータ駆動的な推定とその応用
○石川 勳(愛媛大学), 橋本 悠香(日本電信電話株式会社), 池田 正弘(理化学研究所), 河原 吉伸(大阪大学)
本講演では再生核Hilbert空間上定義されたKoopman作用素について、最近得られた新しいデータ駆動的な推定手法について紹介する。再生核Hilbert空間に、力学系から構成される適切な艤装構造(Gelfand triple)を考えることで、データ駆動的な文脈においてKoopman作用素の適切な有限次元近似やその数学的な解釈が可能となる。また、その応用として力学系の離散的なデータから元の力学系を再構成する手法についても紹介する。
11:50 – 12:10
主成分分析のためのOQDS法の実装の修正について
○千代延 未帆(奈良女子大学大学院), 髙田 雅美(奈良女子大学), 木村 欣司(福井大学), 中村 佳正(大阪成蹊大学)
主成分分析では、大きいほうから数個の特異値と特異ベクトルが必要になる。その目的のために、拡大行列に対する2分法と逆反復法の組み合わせが利用されるが、glued Kimura行列のように逆反復法が失敗する入力行列も存在する。OQDS法は、計算途中で行列が分割されなければ、下2重対角行列の小さいほうから数個の特異値と右特異ベクトルを高精度に計算できるが、主成分分析へ応用する場合には不都合であり、OQDS法の実装を修正する必要がある。
12:10 – 12:30
講演キャンセル低ランク行列を係数行列とする回帰モデルの一致推定量について
○相島 健助(法政大学)
説明変数が誤差を含む線形回帰モデルのパラメータ推定を考える.このようなパラメータ推定では,最小二乗法に関連する何らかの最適化手法を用いることが標準的である.その際,計算対象となる係数行列がランク落ちする場合,解の一意性が損なわれ,通常は最小ノルム解を数値計算する.本発表では,このように解が集合をなす場合に,通常の最適化計算の中で得られる解集合が,推定すべきパラメータの解集合に対する強収束の意味での一致推定量であることを示す.
行列・固有値問題の解法とその応用 (3) (13:50 – 15:10) 座長:廣田 悠輔(福井大学)
13:50 – 14:10
T-Sylvester方程式に対する残差最小化型射影法の適用
○佐竹 祐樹(北海道大学), 曽我部 知広(名古屋大学)
大規模行列方程式に対する数値解法として,直交条件等を課して適当な部分空間に射影することで小規模な問題に帰着させる手法(射影法)が知られている.本発表では,行列方程式の一種であるT-Sylvester方程式(T-congruence Sylvester方程式)がある条件下において等価なLyapunov方程式に変換できることを利用して,T-Sylvester方程式に対する残差最小条件を課した射影法を提案する.
14:10 – 14:30
On breakdown of GMRES for non-range-symmetric systems
○速水 謙(国立情報学研究所), 杉原 光太(なし)
We show that for non-range-symmetric systems of linear equations, Ax=b, where A is a real square matrix, and R(A) is not equal to R(A^T) , where R(A) is the range space of A, the Generalized Minimal Residual (GMRES) method can break down without giving a least squares solution at an arbitrary iteration step in exact arithmetic, and give examples.
14:30 – 14:50
相互作用型残差スムージングにおける近似解ノルムの影響について
○相原 研輔(東京都市大学), 今倉 暁(筑波大学), 保國 惠一(筑波大学)
相互作用型残差スムージングは,線形方程式に対するLanczos型反復法の残差ノルムを平滑化することで,residual gap(漸化式から求まる残差と真の残差との差)の拡大を抑制する手法である.しかし,residual gapは近似解ノルムの大きさにも影響されることが指摘されていた.そこで本研究では,スムージング前後における近似解ノルムの振る舞いを比較することで,相互作用型残差スムージングの妥当性に関する新たな知見を与える.
14:50 – 15:10
Groupwise更新戦略を用いた混合精度CG法の有効性
○相原 研輔(東京都市大学), 尾崎 克久(芝浦工業大学), 椋木 大地(個人)
CG法は大規模連立一次方程式に対する代表的な反復法であるが,丸め誤差の影響により真の残差や誤差が停滞することも多い.Groupwise更新戦略は,真の残差の停滞を防ぐ有効な手段の一つであるが,悪条件問題に対し,誤差の観点では必ずしも改善されない場合がある.本研究では,この問題を簡便かつ効率的に解決するため,Groupwise更新戦略を用いたCG法に対し,部分的に高精度演算を適用する混合精度アルゴリズムを提案し,数値実験によりその有効性を示す.
行列・固有値問題の解法とその応用 (4) (15:40 – 16:40) 座長:橋本 悠香(日本電信電話株式会社)
15:40 – 16:00
n角形くし型有向グラフの固有値について
○柏原 藍(神戸大学), 南出 大樹(東京高専, 東工大)
2023年のJSIAML(15)にて講演者達が提示した有向グラフに対する操作を通じて,特性多項式がFibonacci型の漸化式を満たす有向グラフが多く見つかった.今回は,向き付けられた$n$角形($ngeq 4$)を一辺を共有しながらくし型に連結して作られた有向グラフの特性多項式に対して一般項と固有値を決定することができたので,紹介する.また,一連の研究において得られた,有向グラフと関連する無向グラフの特性多項式に関する予想についても紹介したい.
16:00 – 16:20
段階的半帯幅削減による実対称帯行列三重対角化の実行時間を削減する経由半帯幅
○廣田 悠輔(福井大学), 上片野 裕哉(福井大学)
Bischofらにより半帯幅を段階的に削減することで実対称帯行列を三重対角化する方法が提案されている.段階的半帯幅削減の際に経由する半帯幅(経由半帯幅)の選択には任意性があり,適当な経由半帯幅の選択により三重対角化に必要な計算量や実行時間を削減できる.すでに計算量最小の経由半帯幅を効率的に探索する手法は実現されているものの,計算量最小化は必ずしも実行時間の削減にはつながらず,実用の観点では不便が残っていた.本研究ではCPUキャッシュの利用効率を考慮する経由半帯幅の選択手法を提案し,そのような経由半帯幅が実行時間を削減することを数値実験により示す.
16:20 – 16:40
2つの実対称行列の添字の置換による一致性判定の試み
○村上 弘(東京都立大学)
与えられた2つの実対称行列が添字の置換で一致可能であるかの判定と可能な場合にはその置換を具体的に求める問題を考える.特に行列要素の値の種類が少ない場合が興味深い.この問題の解決に対して実対称行列の固有値分解を経由する方法を試みている.現状ではすべての場合について効率良く判定できる方法はまだ得られていないが,多くの場合にそのような置換が存在すればそれを具体的に効率良く構成できることがわかった.
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