日本応用数理学会 2024年度年会

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会では,日本応用数理学会2024年度年会におきましてオーガナイズドセッションを開催致します.
  • 会期:2024年9月14日(土)〜16日(月)
  • 会場:京都大学大学院理学研究科・京都大学百周年時計台記念館
  • 住所:〒606-8502 京都左京区北白川追分町・〒606-8501 京都左京区吉田本町
  • 年会ホームページ:https://jsiam.org/annual2024/

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プログラム

9月14日 (土) 会場:A
行列・固有値問題の解法とその応用(1) (16:40 – 18:00) 座長:佐藤 寛之(立命館大学)
◎リーマン多様体上の最適化アルゴリズムの固有値問題への応用 / ○酒井 裕行(明治大学大学院), 飯塚 秀明(明治大学)
本発表ではリーマン多様体上の最適化問題を解くための最適化アルゴリズムを扱う。 アルゴリズムとして共役勾配法やメモリーレス準ニュートン法を紹介し、それらの収束性を理論的に示す。その後、対称行列の固有値問題が単位球面上のレイリー商最小化問題と呼ばれる最適化問題と等価であることを示し、紹介したアルゴリズムを適用することで、実際に固有値問題へ適用した際の性能比較を行う。
◎量子ウォークにもとづく 時系列解析 / ○小山 翔平(立命館大学), 今野 紀雄(立命館大学)
Konnoは2019年[1],量子ウォークに基づく時系列解析を導入した.彼のモデルでは,「離散時間」・「離散空間」量子ウォークの確率測度を用いて評価関数が定義され,この評価関数を最小にするパラメータを使い、与えられたデータにもとづき予測をしている.本講演では,「連続時間または離散時間」・「離散空間」量子ウォークの弱収束極限測度を重みとして用いたモデルを提案する. 参考文献 [1] Konno, N. A new time-series model based on quantum walk, Quantum Studies: Mathematics and Foundations, 6 (2019) 61–72.

◎グローヴァーの探索アルゴリズムと絶対ゼータ関数 / ○堀田 一希(立命館大学), 赤堀 次郎(立命館大学), 岡本 陸希(立命館大学), 今野 紀雄(立命館大学), 佐藤 巌(小山工業高等専門学校), 田村 勇真(立命館大学)

量子アルゴリズムにおいて、グローヴァー・アルゴリズムとショアの素因数分解アルゴリズムが特に有名である。古典的な探索アルゴリズムの計算量がNのオーダーなのに対して、本研究で取り扱う前者のアルゴリズムは√Nのオーダーの計算量であり、計算速度が速いことで知られている。本講演では、初めにグローヴァー・アルゴリズムを表す行列の諸性質について考える。その後、それらも踏まえて、その行列ゼータ関数に関する絶対ゼータ関数を計算する。
量子ウォークのゼータ関数とその応用 / ○赤堀 次郎(立命館大学)
一直線のグラフ上のランダムウォークのゼータ関数とそれに対応する量子ウォークのゼータ関数が、遷移行列の固有値を具体的に求めることで計算できる。その複素関数としての性質を用いてもとのランダムウォークおよび量子ウォークの漸近挙動を知ることができる。本講演では、量子ウォークのゼータ関数に関する概説から初めて、上の結果について報告するほか、多様な応用の可能性についてコメントする。
9月15日 (日) 会場:A
行列・固有値問題の解法とその応用(2) (9:10 – 10:30) 座長:橋本 悠香(日本電信電話株式会社)
Supertropical代数上の行列の特異値分解に対する組合せ論的アルゴリズム / ○西田 優樹(京都府立大学), 古池 郁美(京都府立大学), 岩﨑 雅史(京都府立大学)
Max-plus代数とは,加法を最大値,乗法を通常の和をとる演算として定義した半環である.Max-plus代数では加法の逆元が存在しないが,この点を解消する拡張としてsupertropical代数が知られている.本発表では,supertropical代数上での行列の特異値分解アルゴリズムを与える.この方法では逆超離散化を経由するシンボリックな計算を避け,特異値と特異ベクトルを組合せ論的に求めることができる.
実対称行列に対する部分固有対の逆反復改良法 / ○寺尾 剛史(九州大学), 尾崎 克久(芝浦工業大学)
本講演では実対称行列の部分固有ベクトルに対する反復改良法について述べる。我々は、絶対値の大きい固有値からなる部分固有対に対する反復改良法を提案している。ここでは、絶対値が小さい固有値からなる部分固有対の反復改良法に拡張した結果を紹介する。また、この方法から、あるスカラー値付近の固有値からなる部分固有対の反復改良が可能であることを示す。
◎可変的前処理付きblock CG法の内部と外部の反復における誤差の繋がり / ○山本 実央(東京都市大学), 相原 研輔(東京都市大学)
前処理付きblock CG法は,複数右辺ベクトルをもつ連立一次方程式に有効である.ただし,係数行列は大規模かつ疎な正定値対称行列とする.本研究では,可変的前処理の一種である反復法を用いた前処理に着目し,その誤差ノルムの収束性について数理的に解析する.具体的には,前処理部分(内部反復)で満たされる許容誤差が,基盤となるblock CG法(外部反復)の一反復における誤差ノルムの減少率に対応付くことを示す.
◎行列方程式に対する低ランク型Krylov部分空間法のための前処理について / ○佐竹 祐樹(北海道大学), 曽我部 知広(名古屋大学), 剱持 智哉(名古屋大学), 張 紹良(名古屋大学)
低ランク型Krylov部分空間法は,線形行列方程式に対する反復法の一種である.この手法は,反復毎に近似解を低ランク行列として保持するため,省メモリで大規模向けの解法である.本講演では,行列方程式のもつテンソル構造に基づき,低ランク型Krylov部分空間法のための前処理手法を導出する.また,数値例を示して,導出したいくつかの前処理について比較を行う.
行列・固有値問題の解法とその応用(3) (10:50 – 12:10) 座長:深谷 猛(北海道大学)
◎連続スペクトルの擬固有関数を用いた非線形力学におけるスペクトル解析 / ○坂田 逸志(理研AIP), 河原 吉伸(大阪大学)
非線形力学系のスペクトル解析において、行列計算に基づく動的モード分解(DMD)の拡張手法であるResidual DMD(ResDMD)は連続スペクトルを扱える。本研究では、ResDMDから得られるスペクトル特性を反映した擬固有関数に対し、カーネル主角を用いてクラスタリングを行う手法を提案する。熱雑音を含む信号や結合カオス系への応用を通じ、複雑な動力学の特徴抽出における本手法の有効性を示す。
◎関数値カーネルのToeplitz行列積による近似 / ○橋本 悠香(日本電信電話株式会社), Hafid Ayoub(東京大学), 池田 正弘(理研AIP), Kadri Hachem(Aix-Marseille University)
カーネル法において,適切なカーネル関数の選択は重要な課題である.本講演では,関数同士の積を,Toeplitz行列同士の積により近似することで,これまで頻繁に用いられてきた多項式カーネル・productカーネル・separableカーネルの3つを一般化することを提案する.関数同士の積は可換であるが,Toeplitz行列同士の積は非可換であるため,関数の変数に沿った相互作用が生まれる.これにより,関数で表されるデータの特徴を捉えることが可能となる.
◎Koopman作用素理論の深層学習への応用 / ○幡谷 龍一郎(理化学研究所革新知能統合研究センター)
非線形力学系を線形作用素であるKoopman作用素を通して解析するアプローチは、流体力学や制御、機械学習分野での応用されている。深層学習分野においても、深層モデルの最適化の過程を非線形力学系と捉え、Koopman作用素を用いて分析、加速する研究が見られる。本講演ではこのような深層学習分野における応用を、著者らの最近の研究も交えながら紹介する。
◎局所解析汎函数上の押し出しの有限次元近似について / ○石川 勲(愛媛大学)
本講演では、力学系から定まる局所解析汎函数上の押し出し写像の有限次元近似をデータ駆動的行う理論的な枠組みについて紹介する。この枠組みによって力学系のデータ駆動解析において重要な動的モード分解(Dynamic mode decomposition; DMD)を組織的に取り扱うことが可能となり、DMD のアルゴリズムによって得られる近似行列について数学的に厳密な解釈を与えることが可能となる。応用として、ユークリッド空間上の解析的なベクトル場について、ベクトル場から定まる力学系の軌道上の離散的な点から元のベクトル場を復元する手法についても紹介する。
9月16日 (月) 会場:A
行列・固有値問題の解法とその応用(4) (9:10 – 10:30) 座長:相原 研輔(東京都市大学)
2つの行列が添字の置換で一致するかの判定について / ○村上 弘(東京都立大学)
与えられた2つの行列が添字の置換により一致可能であるかの判定が高速に行なえることが望まれる.そこで行列の固有値分解を利用して,行列同士を一致させる添字の置換に対する必要条件を構成して,その必要条件を満たす置換の候補を求める.それは一般には複数になる.そうしてそれらの候補が十分条件を満たすかについて調べる,という方法を用いてみる.現状の方法では,必要条件を満たす置換の候補の数を常にごく少なくすることはできていない.
◎主成分分析のためのOQDS法の実装方法の提案 / ○千代延 未帆(奈良女子大学大学院), 髙田 雅美(奈良女子大学), 木村 欣司(福井大学), 中村 佳正(大阪成蹊大学)
主成分分析では、大きいほうから数個の特異値と特異ベクトルが必要になる。その目的のために、拡大行列に対する2分法と逆反復法の組み合わせが利用されるが、glued Kimura行列のように逆反復法が失敗する入力行列も存在する。OQDS法は、計算途中で行列が分割されなければ、下2重対角行列の小さいほうから数個の特異値と右特異ベクトルを高精度に計算できるが、主成分分析へ応用する場合には不都合であり、OQDS法の実装を修正する必要がある。
◎モジュラリティ行列の固有値計算に基づいた次元削減手法とそのマテリアルズインフォマティクスへの応用 / ○増田 伊吹(筑波大学 情報理工学位プログラム), 二村 保徳(筑波大学 システム情報系), Lin Jianbo(物質・材料研究機構), Lu Anh Khoa Augustin(東京大学 工学系), 田村 亮(物質・材料研究機構), 宮崎 剛(物質・材料研究機構), 櫻井 鉄也(筑波大学 システム情報系)
我々はグラフラプラシアン行列の固有値計算に基づいた次元削減手法と同様の枠組みにより、モジュラリティ行列の固有値計算に基づいた次元削減手法を提案した。本手法は高次元空間において密集しているクラスタの内部構造を強調する性質を持つため、サブクラスタ探索等における有効性が期待される。本手法をマテリアルズインフォマティクスデータに適用して得られる低次元空間において探索的データ解析を行い、その結果について示す。
DE積分型行列関数計算法に対する部分固有対デフレーションに基づく収束性改善およびその性能評価 / ○今倉 暁(筑波大学), 山本 有作(電気通信大学), 立岡 文理(株式会社IHI), 曽我部 知広(名古屋大学), 張 紹良(名古屋大学)
本講演では,行列指数関数や行列平方根などに代表される行列関数の効率的な計算法について考える.近年,二重指数関数(DE)型積分公式を用いた行列関数計算法が提案され注目を集めている.本講演では,DE積分型行列関数計算法の収束性に悪影響を与える複素平面上の特定領域内部の固有値をデフレーションにより分離することで収束性を改善する手法を提案し,数値実験からその有効性を検証する.