日本応用数理学会 第21回 研究部会連合発表会

開催概要

  • 日程:2025年3月5日(水),6日(木),7日(金)
  • 開催方式:現地開催 岡山大学津島キャンパス
  • 連合発表会webページ:https://jsiam.org/union2025/

プログラム

3月6日 (木) A会場

行列・固有値問題の解法とその応用 (1) (9:20 – 10:40) 座長:速水 謙(国立情報学研究所)

09:20 – 09:40
スムージングを介したBi-CR法の残差生成に関する一考察
川瀬 杏里紗(東京都市大学),〇相原 研輔(東京都市大学)

非対称な連立一次方程式に対するBi-CG法とBi-CR法は,それぞれ対称行列向けのCG法とCR法の拡張と見なせる.一方,CG法の残差に対して,その振る舞いを滑らかにするスムージングを適用すると,CR法の残差に変換できることが知られている.本研究では,これらの関係性を踏まえ,Bi-CG法の残差にある種のスムージングを適用することで,Bi-CR法の残差と等価なベクトルが得られるという新しい知見を示す.特に,その等価性に関して,反復ベクトルが満たすべき双直交性の観点から考察する.

09:40 – 10:00
前処理付きCGS法に対するDeflationの適用 (講演キャンセル)
〇高谷 周平(個人)

積型解法に前処理とdeflationを同時に適用していくため端緒として、本講演ではCGS法を取り上げる。議論の単純さと一貫性を保つために、伊藤らによる改善版前処理付きCGS法のアプローチに倣い、前処理付きdeflated BiCG法にCGS法の導出過程を適用する。標準的な前処理付きCGS法にdeflationを適用して得られるアルゴリズムのとの比較も行う。

10:00 – 10:20
線形制約付き凸最適化問題に対するキック加速型代用超平面スパースKaczmarz法
〇Ze Wang (名古屋大学), Ji-Chen Zhao (Tongji University), Jun-Feng Yin (Tongji University), Shao-Liang Zhang (名古屋大学)

An accelerated residual-based surrogate hyperplane sparse Kaczmarz method is proposed for solving linearly constrained convex optimization problems. By adaptively calculating the step size for crossing the threshold interval, the accelerated method kicks the current iteration point to the endpoint of the interval to avoid stagnation. The convergence theory is established, and the piecewise linear convergence rate is studied in detail. Numerical experiments further verify the efficiency of the proposed method compared to the original method in terms of iteration steps and elapsed time.

10:20 – 10:40
線形制約付き最適化問題に対する高速なブレグマン射影法
〇叶 雨欣 (名古屋大学), Jun-Feng Yin(Tongji University), Shao-Liang Zhang(名古屋大学), Yu-Rui Jiang(Tongji University), Ze Wang(名古屋大学)

A fast Bregman projection method is proposed for the solution of linearly constrained optimization problems. At each iteration, a weighted hyperplane is firstly generated by making use of the residual greedily, then a Bregman projection is performed. The convergence theory of the proposed method is established. The linear convergence rate and its upper bound are derived and analyzed in details. Numerical experiments verify the efficiency of the proposed method in terms of the number of iterations and CPU time.

行列・固有値問題の解法とその応用 (2) (11:10 – 12:30) 座長:中村 真輔(秋田県立大学)

11:10 – 11:30
周回積分に基づく精度保証付きRayleigh-Ritz型固有値解法の並列実装
〇瀬戸翔太(筑波大学), 今倉暁(筑波大学), 保國惠一(筑波大学), 高安亮紀(筑波大学)

線形問題の一つである一般化エルミート固有値問題に対する, 固有値・固有ベクトルの精度保証付き数値計算をJulia言語を用いて並列実装し, その並列実装結果を評価する.
固有値解法として階層的並列性を持ち並列実装による性能を十分に利用できることで知られるSakurai-Sugiura法を用いて, 指定した領域内における固有値と対応する固有ベクトルの厳密な包含を与える.

11:30 – 11:50
DE型積分公式に基づく行列関数計算法のデフレーションとその丸め誤差解析
〇今倉 暁(筑波大学),山本 有作(電気通信大学),立岡 文理(株式会社IHI),曽我部 知広(名古屋大学),張 紹良(名古屋大学)

近年、二重指数関数(DE)型積分公式に基づく行列関数計算法が注目されている。本講演では、複素平面上の特定領域内部の固有値をデフレーションにより分離することで収束性を改善する手法を提案する。また、提案法に対する丸め誤差解析を行い、数値実験と合わせて提案法の有効性を示す。

11:50 – 12:10
変分不等式を解く主双対内点法のための不定値行列ソルバ
〇鈴木 厚 (理化学研究所計算科学研究センター)

変分不等式は未知関数に対する値の制約を課す偏微分方程式を記述し, 閉凸集合でのエネルギー最大化問題と等価になり, 離散化ののち大規模な二次計画ソルバーにより求解できる. バリア関数を用いる主双対内点法は有効領域の内部から解を求めるようにエネルギーを修正し, 双対変数を先に消去して主変数に関する正定値問題を得る. 修正のパラメータを減少させると, 係数行列は特異になることが知られている. 一方, 主双対変数を同時に扱うと係数行列は不定値であるが, 可解性に変化はないため安定した求解ができること示す.

12:10 – 12:30
ブロッククリロフ部分空間に対応する行列データに対する一致推定量とその応用
〇相島 健助(法政大学)

ある種の信号処理や時系列データ解析において,ブロッククリロフ部分空間に対応するデータ行列が現れる.このデータ行列は,ランダムノイズが加わることが多いため,目的の情報を得るにはノイズに対して頑健な推定手法が必要である.本発表では,ある自然な統計モデルの下で,行列の特異値分解が像空間の一致推定量を与えることに着目し,信号の到来方向推定手法や動的モード分解における一致推定量を構成する.

行列・固有値問題の解法とその応用 (3) (13:50 – 15:10) 座長:寺尾 剛史(九州大学)

13:50 – 14:10
Koopman作用素を用いた位相モデル推定に関する安定性解析
〇橋本 悠香(NTT / 理研AIP), 池田 正弘(理研), 中尾 裕也(東京科学大学), 河原 吉伸(大阪大学 / 理研AIP)

非線形物理において,振動子の同期現象の解析は重要なテーマの一つである.振動子の解析において,位相モデルが用いられる.本発表では,振動子の位相モデルを推定するための作用素論的アプローチを提案する.推定問題を,力学系を記述する線形作用素であるKoopman作用素のmultiparameter固有値問題に帰着させる.線形代数の問題に帰着させることにより,提案手法が与えられたデータの摂動に関して安定であることを示す.

14:10 – 14:30
サイクルグラフ上の多状態量子ウォークの周期と絶対ゼータ関数
赤堀 次郎(立命館大学),今野 紀雄(立命館大学),佐藤 巖(小山工業高等専門学校),〇田村 勇真(立命館大学)

離散時間の量子ウォークは形式的には線形代数によって記述できる.本研究では,サイクルグラフ上の多状態の量子ウォークについて,状態数が奇素数の場合にその量子ウォークが周期を持つことと,サイクルグラフの頂点数が状態数と一致することが同値であることを示した.また,絶対ゼータ関数との関係も紹介する.なお,本研究は時間発展を表す行列の固有値に着目しているため,固有値に関する問題の応用例であると捉えることができる.

14:30 – 14:50
自動車の暗騒音のモデリングに基づく走行時騒音のピーク周波数分析
〇小針 理史(法政大学), 相島 健助(法政大学)

音の周波数領域でのピークの分布が,人の聴覚印象に強く影響することが知られている.本研究は,自動車のエンジン音に,走行時の暗騒音を付与した際のピーク周波数の分析を目的とする.まず,ロードノイズの数理モデルを定め,実験的にノイズ付与によりピークの個数が減少することを示す.さらに,モデルに最小二乗近似を導入した詳細な分析により,振幅の増幅がピークに与える影響と,ランダム性に起因するピークの消失の効果を検証する.

14:50 – 15:10
行列スケッチングによる縮小ランク回帰
〇村田 晴輝(東京大学)、松田 孟留(東京大学、理研CBS)

縮小ランク回帰とは多変量線形回帰で回帰係数行列にランク制約を加える手法であり、最小二乗法と特異値分解によって計算できる。しかし、データのサイズが大きくなるにつれ、これらの計算は実行時間の観点から困難になりうる。本研究では、行列スケッチングや乱択特異値分解を用いて縮小ランク回帰の計算量を削減することを考える。これらの乱択アルゴリズムの有無やスケッチングの種類による実行時間・推定精度の違いを数値実験によって比較する。

行列・固有値問題の解法とその応用 (4) (15:40 – 17:00) 座長:相島 健助(法政大学)

15:40 – 16:00
多変量線形回帰モデルにおけるサンプル外予測に対する予測平均2乗誤差の不偏推定量
〇小田 凌也 (広島大学)

多変量線形回帰モデルにおいて有効な説明変数を選ぶための変数選択問題を扱う. 変数選択問題での予測の観点においては, サンプル内予測とサンプル外予測の2通りが挙げられ, サンプル内予測に対しては基準化予測二乗誤差の不偏推定量としてMCp規準が提案されている. 本講演では, 2通りそれぞれの予測に対する基準化予測二乗誤差の相違点を示し, サンプル外予測に対する基準化予測二乗誤差の不偏推定量を構築する.

16:00 – 16:20
行列の特異値縮小推定
〇松田 孟留(東京大学、理研CBS)

多変量正規分布に従う標本を観測して平均パラメータを推定する問題は線形回帰など多くの場面で現れる。この問題において、3次元以上では最尤推定量より平均二乗誤差が小さい推定量が存在し、縮小推定量とよばれる(Steinのパラドックス)。本講演では、行列の縮小推定に関する最近の結果を紹介する。特異値のゼロへの縮小(低ランク行列の空間への縮小)によって、縮小ランク回帰など未知の行列が低ランクに近い状況で有効な推定量が得られる。

16:20 – 16:40
共分散行列の縮小推定
〇奥戸道子(東京大)、清智也(東京大)

統計モデルの未知パラメータの推定法に、縮小推定と呼ばれる手法がある。正規分布の平均ベクトルの推定で、推定量の原点からの距離を小さくするように原点方向に引っ張る(縮小する)手法などが知られている。推定量がベクトルではなく行列のとき、縮小する方向は色々考えられるが、正規分布の分散共分散行列の推定では固有値が0になる方向へ縮小する手法が代表的である。本発表では、なぜ固有値を縮小するとうまくいくことが多いのかを考察した後、モデルにスケール変換不変性という条件を課すことで、固有値以外の縮小がうまくいく例についても考察する。

16:40 – 17:00
統計モデルの線形近似とスパース推定
〇廣瀬 善大(明治大学)

本講演では、統計学分野において一般化線形モデルとして知られる統計モデルを取り上げ、そのパラメータ推定を考える。その際、多様体である統計モデルを接空間で線形近似し、その上で(一般化ではなく通常の)線形回帰モデルのためのスパース推定法を実行することを試みる。問題設定と手法の説明をした後、数値実験の結果を報告する。

講演募集について(終了しました.多数のお申込みありがとうございました)

日本応用数理学会「行列・固有値問題の解法とその応用」研究部会では,日本応用数理学会第21回連合発表会においてオーガナイズドセッションを開催致します.本研究部会のオーガナイズドセッションにて講演希望の方は下記のフォームからお申し込みください.講演時間は,質疑応答を含めて20分の予定です.

講演申し込みフォーム https://forms.gle/fcfZsF4Jw7xhQtvT8

講演申し込み〆切は2025年1月9日(木)です

2/21(金)追記:プログラムを公開しました.連合発表会webにも公開されています.多数のお申込みありがとうございました.

1/9(木)追記:〆切を1月15日(水)18時まで延長します(申し込みが上限に達した場合はその時点で打ち切らせていただきます)

1/2(木)追記:
・何かございましたら担当の相島aishima<at>hosei.ac.jpまでご連絡ください.

12/16(月)追記:
・申し込みは1/9(木)の 18:00までにお願いします.
・フォームに200字程度の講演概要の記入が必須ですのでご準備ください.