日本応用数理学会 2015年研究部会連合発表会

日本応用数理学会 2015年研究部会連合発表会

 

  • 日程:2015年3月6日 (金) 〜 3月7日 (土)
  • 会場:明治大学中野キャンパス
  • 連合発表会全体のWebページ:http://union2015.jsiam.org

プログラム(研究部会関連部分のみ)
3月6日 (金)

セッション1:固有値(9:30-10:50) 座長:山本 有作(電気通信大学)

  • 講演1(9:30-9:50)
    レゾルベントの多項式をフィルタとして用いた一般固有値問題の近似解法について
    ○村上 弘(首都大学東京・数理情報科学専攻)

    概要:フィルタの作用を利用して,実対称定値一般固有値問題の固有対で固有値が指定区間にあるものだけを解く.使用するフィルタはある虚数シフトのレゾルベントとその共役の作用の多項式として構成する.

  • 講演2(9:50-10:10)
    ある種の構造を持つ非対称帯行列に対する固有ベクトル計算
    ○竹内 弘史(東京理科大学,修士課程1年),相原 研輔(東京理科大学),福田 亜希子(芝浦工業大学)石渡 恵美子(東京理科大学)

    概要:離散ハングリーロトカ・ボルテラ系に関連する構造を持つ非対称帯行列の複素固有ベクトルを,実数による演算のみで効率よく計算する方法を示す.

  • 講演3(10:10-10:30)
    Hessenberg型でないTN行列の逆固有値問題に対する有限ステップ解法について
    ○赤岩 香苗(京都大学情報学研究科 D2),中村 佳正(京都大学情報学研究科),岩崎 雅史(京都府立大学生命環境学部),近藤 弘一(同志社大学理工学研究科)

    概要:すべての小行列式が非負となるような行列はTotally Nonnegative (TN) 行列と呼ばれる。Hessenberg型のTN行列の逆固有値問題に関しては、離散ハングリー戸田方程式の視点から有限ステップ解法の定式化に成功している。本講演では、離散ハングリー戸田方程式の拡張を通じて、Hessenberg型でないTN行列の逆固有値問題も有限ステップで解けることを明らかにする。

  • 講演4(10:30-10:50)
    行列のすべての固有値と不変部分空間に対する数値的検証法
    ○宮島信也(岐阜大学工学部)

    概要:n次行列のすべての固有値とそれらに対応する不変部分空間に対する数値的検証法を提案する.この方法の計算コストは多くの場合O(n^3)のみである.また,この方法は対角化不可能な行列に対しても適用可能である.

セッション2:固有値・特異値(11:00-11:40) 座長:曽我部 知広(愛知県立大学)

  • 講演5(11:00-11:20)
    厳密な物理的保存則をもつクリロフ部分空間解法の構築
    ○星健夫(鳥取大学, JST-CREST)

    概要:近年筆者らは実問題(大規模電子状態計算)の基礎として、一般化エルミート固有値問題に対して複数クリロフ部分空間の直和を用いる解法(多重アーノルディ法)を構築し、厳密な物理的保存則をもつことを示した[1]。本講演では、その数学的拡張について述べる。
    [1] T. Hoshi,et al., J. Phys.: Condens. Matter 24, 165502 (2012)

  • 講演6(11:20-11:40)
    直交QDアルゴリズムによる高精度特異値分解について
    ○田中博基(京都大学M2),木村欣司(京都大学)石上裕之(京都大学D2),中村佳正(京都大学)

    概要:発表者らはvon Matt(1994)により提案された直交QD法に対して,より高精度に特異値分解を行うためのアルゴリズムと実装上の改良を行ってきた. しかし, 本研究部会の第18回研究会(2014)で報告したように,特異値がクラスタとなる行列の場合には特異値分解の誤差がDemmel-Kahan QR法(LAPACK) と比較して大きくなることが課題として残されていた. 本講演では, スプリット判定法を改良することにより,この課題が解決したことを報告する.

セッション3:HPC(13:30-14:50)  座長:櫻井 鉄也(筑波大学)

  • 講演7(13:30-13:50)
    並列化した多倍長行列積計算の性能評価
    ○幸谷智紀(静岡理工科大学 )

    概要:キャッシュ最適化とマルチコアCPU環境下で並列化した多倍長行列積計算の性能評価を行い,LU分解の高速化に寄与できることを示す。また,GPU環境下で並列化した多倍長行列積計算の性能についても考察する。

  • 講演8(13:50-14:10)
    Xeon Phi における部分固有対計算の高速化に向けて
    ○石上裕之(京都大学 D2),木村欣司(京都大学),中村佳正(京都大学)

    概要:メニーコアプロセッサの一つである Xeon Phi を用いた2分法と再直交化付きブロック逆反復法に基づく部分固有対並列計算の高速化の現状,とりわけ,Xeon Phiの性能を引き出す上での課題について報告する.

  • 講演9(14:10-14:30)
    超並列固有値計算のための最適複合化数理ソルバと電子状態計算におけるベンチマーク
    ○井町 宏人 (鳥取大学 D1, JST-CREST),星 健夫 (鳥取大学, JST-CREST)

    概要:一般化固有値問題の超並列計算のために、ScaLAPACK、ELPA、EigenExaの3つの固有値問題ライブラリからルーチンを組み合わせることで、最適に複合化された数理ソルバを構築した。電子状態計算における10,000から1,000,000次元行列の問題について、京コンピュータを含む種々のスーパーコンピュータ上でのベンチマーク結果を示す。

  • 講演10(14:30-14:50)
    オンライン自動チューニングのための性能モデルの構築法  〜 正方行列の特異値分解を例にして 〜
    長島聖児(神戸大学M2),深谷猛(理化学研究所計算科学研究機構),○山本有作(電気通信大学),横川三津夫(神戸大学)

    概要:オンライン自動チューニングでは,プログラムに含まれる性能パラメータを実行履歴に基づき逐次的に修正し,実行時間などのコストを最小化する。そこでは,自動チューニング機構で用いる性能モデルが重要な役割を果たす。本発表では,特異値分解を例にとり,効率的な自動チューニングのための性能モデル構築法を検討する。

セッション4:線形方程式・テンソル・行列関数(15:00-16:00)  座長:中村 佳正(京都大学)

  • 講演11(15:00-15:20)
    直交制約付き最適化問題に対するニュートン方程式の求解について
    ○相原 研輔(東京理科大学),佐藤 寛之(東京理科大学)

    概要:ある種の直交制約付き最適化問題に対するニュートン方程式は,複雑な行列方程式で表される.本発表では,これを標準的な連立一次方程式の形式に変換し,反復法を用いて効率的に解く方法を提案する.

  • 講演12(15:20-15:40)
    CP分解アルゴリズム: Reduced ALSの性能評価
    ○村越 智文 (東京大学 修士2年),松尾 宇泰 (東京大学)

    概要:3次元テンソルの解析に有効なCP分解を行うアルゴリズムの中で,最も利用される手法はALSである.著者らは前回の年会のポスター発表で,行列の次元削減を応用し高速化したReduced ALSを提案した.本発表では,Reduced ALSの性能を評価し,更に代数的なCP分解アルゴリズムとの比較を行う.

  • 講演13(15:40-16:00)
    副対角Pade近似による行列指数関数の効率的アルゴリズム
    Stefan Guettel(Manchester),○中務佑治(東大)

    概要:行列の指数関数計算には多くのアルゴリズムが知られているが、中でもScaling-Squaringに基づくものがよく使われている.本発表では関数近似論の立場からこのアルゴリズムを再考し、副対角Pade近似を用いてscalingを従来より大幅に小さくすることができ、overscalingによる数値不安定性を解消できることを示す.